毎日私服を選ぶのは大変だったから、制服ってすごく楽だった。
男女で分かれてて、それを着れば自己紹介しなくても女だと分かるし。
でも、学ランってかっこいい。
いいな。私も着たいな。
でも、ことごとく洋服って私が好きな服は“似合わない”。
私が中学に上がって部活に入って思ったのは、みんな大人だなだった。
警察はここがすごい独特で、小学6年生までを区切りとしてる事が多くて、中学からパタリと来ない人が多い。
だから小学6年生が一番のお兄さんお姉さんだし、その上で来るのはたまに先生みたいな人たち。
だから部活は、お兄さん、お姉さん達がたくさんいた。
でも私はわからなかったことがあった。
一人っ子の欠点かもしれない。
私はお兄さんお姉さんへの接し方を知らなかった。
みんないい人だったのだと思う。
だからニコニコして、ふざけたりして、軽口を言われたら言い返した。
兄弟みたいなつもりだった。
男女合同の部だから、部長は男子がやってた。
1年生で入った時の部長は女の子に優しくて、口が悪くて、素行もいいものでは無い人。
でも部では強くて、試合を見てて華がある人だと思った。
女の子には優しい、だから私にも入学してすぐは優しかった。
ただ私は生意気で、可愛くないから。
その優しいはすぐ無くなって。
名前の呼び方が変わった。
女子は私を入れて4人しかいなくて、先輩が3人。そのうちの2人は〇〇ちゃんって呼ばれてて、もう1人と私は呼び捨てだった。
うっせブス!お前は女じゃない。とかもう1人の先輩と「ひどーい」って笑ってた。
その先輩がどう思ってたかは知らないけど、私はそれでもよかった。
だって女の子が嫌いだから。
顧問になった先生の教え方は割と私にはあってた。
頭が痛くはなる位情報が多くて、形にするまでは大変なのだけど、その先生は必ずイメージを言葉でくれた。
小学生でやりたかった呼吸と竹刀の握りはもうできていた私は、運動神経の悪さが打突に出ていたと思う。
打ちやすいフォームで打っていたから、形が悪いし変な形で打つからその分遅くなってしまって、本来もっと速く打てるんだよと教わった。
癖ついたものを直すのは大変、と言われてはいるけれど、顧問も私がここまで運動神経が悪いとは思ってなかったらしい。
「君、同じ方の手と足が一緒に出ちゃってるよ」
走っててそう言われたら、じゃあ左足が前の時は右手を前に出せばいいんだ。
ここまでは分かる。頭では。
じゃあやってみる。
ん?
なんでそうなる?
見てる人が皆首を傾げるくらい、私は動きをイメージするのが苦手だった。
最初はふざけてんのか?と言われたけれど、大真面目で。
顧問の方が次第に私の出来なさに合わせて、体の筋肉のどこをどう動かすのかを口で説明してくれるようになった。
練習が終わっても、
さっきの動きはここをこう使うんだよ、と防具を取って道着だけの私にしっかりと筋肉の位置を示しながら。
だから理解出来たし、納得したし、体がすごく柔らかくなって、また強くなったと周りからは評価された。
その頃、小学生の時に出た第1回の大会の延長で全国大会が新しく始まることになった。
延長だったから、その第1回大会に出た子達の中から選抜して、都の代表にしようという話になったようで、私と同い歳の男の子2人が中学1年生ででて、そして私とそのうちの1人が勝ち抜いた。
その選出方法は結構掲示板で荒れてたけれど、選り好みして試合出てるバカなんてどうでもいいと思って見なかった。
その代わりに私が強ければいいと思ってた。
この頃から非常に私の精神的な弱さが出てきた。
中学1年に上がって。私は何故かまた市の大会で優勝した。2.3年もいる、中学女子の括りでの優勝。
そして警察の先生が変わって、その若い先生は中学の私たちまで指導してくれる先生。
礼儀や親への感謝を重きに置いてて、私のダメな時は直ぐにぶん殴られた。
いつもパチンコに行ってて見にこない母親がある日たまたま練習を見に来た時に、「もっとこうしないと」「これじゃあダメだ」とか分かってることを横からベラベラと私に投げかけてきて。
最初は聞こうとした。
ただ、その日は私も何か違った。
いつもよりイライラしてた。
「うっせぇんだよ!!」
たぶん、お母さんに稽古中に怒鳴ったのは初めてだった。
その瞬間、面のついた私の頭を思い切り何かが殴りつけてか蹴りつけて分からないけど、とにかくすごい衝撃で立ってらんなかった。
「親になんて口きいてんだ!お前なんか知らねーよ。」
そう言われた。先生は助教室へ入っていってしまった。
ムカついた。でも悪いことを私はした。親にそんな言葉言っちゃいけなかった。頭では分かってる。
それを見てた親達も稽古してた子達も誰も私に何も言わなかった。
私は先生に頭を下げに行った。
言いたいことは沢山あった。
だってアンタは知らないじゃないか。
お母さんは剣道してる私が嫌いで、ギャンブルが好きで。
お父さんにも周りの人にも私に隠すように言って。
今日たまたま、私が調子悪いだけなのに、それを偉そうに横から分かったふうなこと言う。
なんて理不尽なんだよ。
優勝したって強くなったって、他人事のようにおめでとうも私しか良くないみたいに思ってる。
私はみんなに喜んで欲しくて、やってる。
なんで私がこんなに頑張ってるのに、その途中経過の練習ではあんなふうにいうの。
私の勝ちに私より喜べないなら何も言わないで。
自己中心的。なぜ他人がお前の勝ちに喜ばないといけないのか。
そりゃそう。
そんなのはわかってる。
だから誰にも言わないでただ1人。
助教室を開けて、正座して、先生に頭を下げた。
それでも私は強かった。
どこに新しく出稽古に行っても、そこの同じ女子の選手には負けないし、先生たちもすごく興味を持ってた。
警察の先生の伝ででたぽっと出の試合でも何故か個人で優勝した。
「優勝したの!?すごいじゃん!」
いつもはそんな感じの本当に若い先生。
悪い人じゃなかった。今までで一番強いし。
それにこの人の稽古中の目はすごく怖かった。
その先生と部活の顧問は割と直ぐによく話す仲になったみたいだった。
私の話になると私の精神的な弱さはいつも上がるという。そう、私は精神的に弱い子なのだ。
みんなはこんなの耐えてて、こんなことでいちいち試合のパフォーマンスに影響が出るものじゃない。
私は弱いのに強いのだ。
その頃、1番頭を悩ませていたのは、私には難しい恋愛だった。
こんな男みたいな見た目の私をとても好きだと言ってくれた子がいた。剣道はしてるしなんなら仲良くもなってて。
その子は周りから好かれる人だった。
試合会場であえば話しかけて来るし、何故かその子の道場の先生たちも私に対して、その子の事を薦めてくる。
そのうち警察にまで広がってた。
私はこの手の話は顔が赤くなるし、お腹に来るゾワゾワが嫌で苦手。
特に剣道でそれをやられると調子が狂う。
周りはそれを“恋”と言った。
でも、私は2次元に恋した時。
そんな気持ちじゃなくて。
この人と死ねるなら死にたいし、この人が生きるなら一緒にいたい。
この人のためなら死んでもいいかも。
それが“恋”だと思った。
国語で古典をやった時にそんな和歌の話をやって、ああ、そう。恋ってコレコレ。ってなんか納得したのを覚えてて。
それを親に話したら、漫画の読みすぎと言われた。
だから現実を見た。
私を好きと言った子のことを見て、何が無理か。
背が私より低いから嫌。
あとは正直どうでもよくて、仲もいいし話も面白いし。
本当に、背が低いから嫌なの。
でも私のこの言葉は非難された。
それは失礼だろって。
じゃあ行動で言おうか。
私の写真を他校の知らない人に見せたせいで、駅前で知らない人に「お前アイツの好きな子だろ?」って声掛けられた。
誰?と何?がいっぺんに来る感覚。
それがすごく不快だった。
でもそれは
アイツはお前のことが好きだからさ。
本人に直接断ったこともある。
それでも私を好きだと言ってくれるのはすごいと思うけれど、私が思わせぶりなことをしたせいらしい。
だからまあ仕方ない。
ある日、その子の道場の人から言われた。
「咲弥は好きな人いるの?」
カヲルやゾロやエースやetc、それを除くなら居ない。
「居ないなら付き合ってみれば?いいとこ見つかるよ?」
恋ってこんなもんなんだなと思った。
顧問はその事には触れなかった。
怖いぐらい。
母親のことも、恋の話も。
だから顧問がすごく居心地がよかった。
「お前最近太っただろ」
確かに。暴飲暴食はしてた。
ちょっとお腹に肉はのった、というか太もも?腰周りに肉が増えた気もする。
あと顔も。
「52キロにしないと次の試合出さないからな。」
体重計なんてほぼ乗ったことがないから、そう言われて家で乗った。
58だった。
体重管理なんてしたことは無い。
ダイエットもよく分からず、やれる方法は食べないだった。
筋トレとかはなるべくしたくない。
走りたくもない。
でもそのストレスとその他のストレスでさらに私の安定感はなかった。
情緒不安定。
毎朝起きれない。
布団から体が起き上がれない、目が開かない開けたくない。
親に怒鳴られて渋々体を起こす。
朝ごはん要らないは力出ないよと言われるし、せっかく用意したのにと言われるので出来ない。
起きれないことを夜更かしのせいだとお小言を頂いて、私が不貞腐れるとまた怒られる。
お母さんっていない方がいいんじゃね?
本気で思ったこともあった。
でもじゃあ家事ができるかといえば出来ない。料理も、お父さんの服の支度も。だからなんで私産んだんだろ。
夜や給食を食べない日が続いたある日だった。
顧問が私に
「体重測るから保健室こい。」
地獄の瞬間だと思った。
あれから怖くて体重計乗ってない。
58からたった数日で変わるもの?
本当に、その日の授業は何も頭に入らないし板書もままならなかった。
部活も終わって、ほとんど学校に人が居なくなった放課後。
保健室へと入って、私は先生の指示の前に体重計に乗ってみて、50……いくつかと見ようとしたとき。
保健室の鍵がしまって、
「何服着たまま乗ってんだ、服脱いで乗れ。」
この意味を理解するのは私の頭ではむずかしかった。
スポーツでは当たり前の話。
体重管理。なんて聞くでしょ。
私も全然スポーツとか知らないけど、聞いた事ある。
そっか、それってこうやるんだ。
別に女だからやられてる訳じゃないならいいよ。
少女漫画みたいな、好きな人とすることって憧れてた。
そんなに嬉しいんだろうな。
恥ずかしいけど、何してるかは明確にはよく分かってないけど、なんとなく保健体育で習ったこと。
体重管理はそれとは違う。
体重測って、スリーサイズ測って、体型の変化を写真に収めて。
それだけ。
だから別に、気にすることじゃない。
なのにすごく外から聞こえる野球部の声が怖かった。
たぶん、私はその時、その言葉をちゃんと理解して納得してたんだと思う。
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