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轟音と揺れが大きくなる。
横たわった状態で、この揺れは……またちょっと気持ち悪くなってきたし、酔いそうで嫌だな。
「……涼」
凝り固まった思考に侵される。目を瞑ってるせいで真っ暗だ。動けないし、動きたくないから大人しくしていたいんだけど。
「涼! もう着くから起きろ!」
「うわっ!?」
降り掛かった声と共に、涼は現実に引き戻された。
突然抱き起こされたことに驚き、息を飲む。そして寝惚けた思考を巡らせた。
「もう。寝てるとこなんて見られたら何事だって思われるだろ」
涼の前では、准さんが呆れ顔を浮かべている。
「えっ……あ、はい」
いつの間にか、彼は離れていた。ひょこっと窓の外を覗くと、変わらない遊園地の景色が目に入る。二人が乗っていた観覧車のゴンドラは、もう地上に降りる寸前だ。
そうか……。
涼は軽く頬を掻く。
夢でも見てたみたいだ。でも目が覚めた。
これで全部終わる。……本当に、終わってしまう。
「着いたな。降りよう」
准の声掛けに涼は頷いた。
扉が開き、足元にお気をつけください、とスタッフが出迎えた。准は先に降りて、止まらないゴンドラに乗る涼に手を伸ばした。
「ほら」
「ありがとうございます」
繋がれた手は、またすぐに離れた。
「観覧車って長いですね」
「そうか? 俺は早かった気がする」
「あれ、そうですか……」
どこへ向かってるのか分からないが、とりあえず歩いた。人気のない方へ、ゆっくりと。
大通りの方では眩いライトが闇に浮かんでいる。
訊きたいことはたくさんあるものの、胸に重圧が加わる。涼は口を噤んだ。
創に連れ戻され、一緒になって准から逃げた自分は何をするにも資格がない。だから口を閉ざして俯いた。
創から逃げる為に准の家へ行ったわけではなかった。だが成り行き上彼の家に居候することになり、創の目を盗んで暮らすしかなくなった。
やることなすこと悪い方向へ流れて、自身の愚鈍さに呆れてしまう。
創の家に帰るつもりはなかった。なのに彼が目の前に現れたら頭が真っ白になって、彼についていった。
准はきっと、「裏切られた」と思ってるだろう。自分を騙して、裏切ったと。
最低。
その通りだと思う。彼の恋愛を応援しようと思ってたのに、気付いたら彼が好意を抱く加東さんに嫉妬した。全部どうでもよくなって、投げ出そうとした。これじゃ創さんと変わらない。
やはり自分は、期待を裏切らない最低野郎だった。
冷たい夜風が間を通り抜ける。
「涼。さっきはごめんな」
「えっ」
「あんなとこで、……無理やり押し倒して」