母親からの虐待に耐えていた羊。学校には行かせてもらえず、ご飯も満足に食べられなかった。
母親は完璧主義だった。だから羊の身体に傷跡が残るようなことはしなかった。虐待がバレ、自分の完璧にギズが入るのを、避けたかったのだろう。
羊が7歳になった。この頃から羊は自分の身体にキズを付けるようになった。あの女から自分が生まれたのだと、自分はあの女のものなのだと認めたくなく、この体は自分のものだと思いたかったからだ。
母親が外へ出る支度をしている。羊は連れて行ってもらえると、思っていなかったが久々に母親から優しい声をかけられる。
「ようちゃん〜!お外行きましょ!」鼻が曲がるような香水の香り きついアルコールの匂いと派手な服、顔は化粧で塗りたくられている。母親と手をつないで外に出る。母親は一軒家の前で足を止めた。
「レ〜アちゃん!あ〜け〜て!」母親が叫ぶと、
「はぁい♪」と可愛らしい声が返ってきた。
玄関のドアから、ひょこっと顔出した少女は、はにかんだ。
「こんにちはっ!あなたがようちゃん?私はレア!よろしくね」
レアという名の少女はお人形のようだ。肩まで伸びたクリーム色の髪の毛、薄茶の大きな瞳 白い肌、透き通るような声 ピンク色のお洋服
羊は思った。もし私がこの子なら母さんに愛してもらえる、とこんなこと思ってはいけないと分かってはいるけれど母さんは今まで自分に向けられたことのない慈愛に満ちた目であの子のことを見つめている。羊はそれに嫉妬した。
コメント
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作者です。今回、羊は一言も喋っておりません! いつ喋ってくれるのか…。 ちなみに羊は男の子でレアは女の子です! 楽しんで読んでくれると嬉しいです。