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結論から言うと。
翔太は怒った。もう信じられないくらいに怒った。
すぐに帰ると宣言し、車に乗り込んだ。そして運転席に乗り込み、その車が俺の車だと思い出すと、降りてきた。
💙「タクシーで帰る」
💚「こんな山奥で?すぐに捕まらないし、料金もバカにならないよ」
💙「阿部ちゃんといたくない」
💚「ごめん。じゃあ家まで送る」
💙「……………」
運転しながら翔太の横顔を窺う。
ひどく混乱しているように見えた。今、一体どんな気持ちでいるんだろう。俺に望みはあるのか。揶揄っていると思われるのだけは避けたい。
💚「翔太」
💙「喋るな」
翔太は冷たく言い放つ。綺麗な横顔からは感情が読み取れなかった。
💚「本気だよ」
この本気だよ、はいつか涼太に言った嘘の本気じゃない、どうか翔太に伝わってほしい。俺が悪いのは解ってる、解っているから。どうしても翔太に誤解されるのだけは嫌だった。
💙「…………新幹線の」
💚「え?」
💙「新幹線が停まる駅まで送って。家までじゃなくていい」
💚「翔太」
💙「混乱してるし、大事な友だちに酷いこと言いたくないし。ただ」
💚「…………」
💙「なんで俺に直接来なかったの」
💚「…だって涼太のこと好きだったろ。他の男を見ている翔太を手に入れることはできないと思ったから」
💙「……嘘か本当かわかんない。普通、そこまでする?」
💚「俺の気持ちを信じてほしい」
駅に着き、翔太は振り返らずに降りてホームへ向かった。
気持ちは伝えた。
翔太が涼太に何かを言うのか、言わないのか。俺にははかり知ることができない。それでも2人が元通りになる可能性は低いと思っていた。
ここからは、翔太に愛してもらうように頑張るしかない。それだけの覚悟でしてきた遠回りなのだから。