「__やて__て」
「はや…..て」
「はやて!!」
「うわっ」
俺の友達、いつきが
俺の名前を繰り返し呼んでいた。
音楽室には、俺といつきの二人。
気付けば目の前にいつきがいて、俺を睨みつけていた。
そして溜息を一つ零す。
「お前ってさ」
「何かに夢中になってると、ほんとに視界が狭くなるんだな」
「……」
その言葉に、俺は何も言い返せない。
いつきは苦笑しながら言う。
「もっと周り見た方がいいぞ?」
「……」
そんなのいつきが言えたことじゃない。
いつきだって、別の友達との会話に俺が入っても、反応すらしてくれないくせに。
いざ俺のことになると、こうして馬鹿にしてくるんだ。
これだから友達もできないんだろうが。
俺はそう返そうと思うも、言葉が上手く出なかった。
「ふっ、まあいい」
「俺の用はこんなことじゃねえから」
「この資料。空き教室に運んどいてくれ」
「なんで俺なんだよ。いつきが頼まれたんだろ?」
「うるせえ。ピアノひいてるぐらいなら、そんぐらいやっとけよな 」
そう言って、俺の体に乱暴に資料をぶつけた。
そしてスクールバッグを肩にかけて、教室を飛び出して行った。
「なんなんだよ、あいつ…」
「俺には重要な役割があるってんだ」
「お前に構ってる暇はねえんだよ、ったく」
だが、もう既にいつきはいない。
音楽室はしんと静まり返り、静寂に満ちていた。
俺はこの空間、この時間が好きだ。
いつきがいなければ、こんなことには…
まあ仕方ない。
俺は独り言をつぶやきながら、音楽室を出て、鍵をしめる。
また、幸いなことに
その教室はすぐ近くにある。
俺は資料を整え、教室に向かって歩き出した。
空き教室で
俺は教室内を見渡す。
よし、誰もいない。
これを置いて帰ればいいんだよな?
俺は急いで、一番近くにあった机に 資料を置く。
それから教室を出て、角を曲がる…..
ところだった。
その時、激しい衝撃音が廊下中に響き渡った。
それと同時に俺の体も、稲妻が走ったかのような感覚を覚えた。
まずい、ぶつかった!
俺は謝ろうと、急いで後ろをふりかえる。
だがそこに、人の姿は見えなかった。
「ん…?」
「(おかしいな、確かに誰かとぶつかったのに…)」
不思議に思ったが、今は時間がない。
俺はまた歩き出した。
いち早く帰らなければ。
だが、はやてはあの時、とある大事なものを見落としていた。
そのことを、当時の彼はまだ知らない…..
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