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第三章 消えた少年
翌朝――。
王立魔法学院、生徒会室。
窓から差し込む朝日が部屋を照らしていた。
「昨日の件だけど。」
ルークが机の上に資料を広げる。
「夜のうちに王都騎士団から追加の報告が届いた。」
ノアが一枚の地図を指差す。
「行方不明者は現在七名。」
「全員、北区で姿を消しています。」
「共通点は?」
レオンハルトが腕を組む。
「年齢も職業も違います。」
「ですが、一つだけ。」
ノアは静かに続けた。
「全員が失踪する直前、『赤い目の人物を見た』と証言しています。」
部屋の空気が重くなる。
ルークは静かに息をついた。
「やはり偶然じゃないね。」
「会長。」
扉がノックされる。
「ルミアーナ嬢がお見えです。」
「ありがとう。」
ルークが微笑む。
「入ってもらえるかい。」
扉が開き、ツララとねねが入ってきた。
「おはようございます。」
「おはよう、ルミアーナ嬢。」
ルークは立ち上がる。
「急に呼び出してしまってごめんね。」
「いえ。」
ツララは小さく首を振った。
「私にできることがあるなら、お手伝いしたいです。」
その返事に、ルークは優しく笑う。
「ありがとう。」
「実は昨日会った女の子のお兄さんが、まだ見つかっていないんだ。」
ツララの表情が曇る。
「あの子の……。」
「うん。」
「僕たちも捜索に加わることになった。」
王都北区。
市場はいつも通り賑わっている。
しかし、その笑顔の裏には不安が隠れていた。
「また一人消えたらしい。」
「夜は外に出るなって。」
「怖いねぇ……。」
住民たちの声を聞きながら、一行は路地裏へ入る。
ねねがしゃがみ込み、地面を見つめた。
「足跡があります。」
レオンハルトも確認する。
「大人の男……。」
「それと。」
ねねは細い跡を指差した。
「これは……何でしょう。」
ルークも近付く。
地面には黒い灰のようなものが散らばっていた。
ノアが袋へ入れる。
「学院で調べましょう。」
その時だった。
「助けて!」
少女の悲鳴が聞こえた。
全員が走り出す。
広場では昨日会った女の子が泣いていた。
「どうしたの!?」
ツララが駆け寄る。
「お、お兄ちゃんのペンダントが……。」
少女の手には、銀色のペンダント。
泥だらけになっていた。
「これ……。」
ルークは表情を引き締める。
「失踪した場所の近くだ。」
「落ちた時に壊れたのかもしれない。」
ツララはペンダントを両手で包む。
「きっと、お兄ちゃんは生きています。」
優しく微笑む。
「私たちが必ず見つけます。」
少女は涙をこらえながら頷いた。
「……ありがとう。」
その様子を、建物の屋上から見つめる影があった。
「面白い。」
黒いローブの人物が口元を歪める。
「随分と人間らしい。」
赤い瞳がツララを見つめる。
「それでこそ。」
「価値がある。」
影は静かに闇へ溶けていった。
その日の夜。
学院へ戻ったルークたち。
ノアが昼間に回収した黒い灰を魔法で調べていた。
すると――。
灰が紫色に光る。
「……!」
「会長。」
ノアの声が少し震える。
「これは普通の灰ではありません。」
「魔力が残っています。」
ルークは静かに目を細めた。
「やはり魔族か。」
ノアは首を横に振る。
「いえ。」
「もっと厄介です。」
「これは……。」
「人間を魔族の魔力で操る術式の残滓です。」
部屋が静まり返る。
レオンハルトが拳を握る。
「つまり。」
「王都のどこかで、人間が操られているってことか。」
ルークは窓の外を見つめた。
夜の王都は、いつもと変わらないように見える。
だが、その闇の中では、確実に何かが動き始めていた。
「急がなければならないね。」
その瞳には、生徒会長としての強い決意が宿っていた――。
第二巻 第三章 完
📖 次回・第四章「夜を彷徨う影」
ルークたちは夜の王都で張り込みを開始。そこで行方不明になった少年の痕跡を見つけるが、その先で待っていたのは「人間を操る魔族」の能力だった。そしてツララは、自分でも気付かないうちに人を守るための力を少しずつ見せ始める。
コメント
1件
うわあ…今回も重くて切ない話だったね🥀 人間を操る術式の残滓とか、赤い目の人物とか、ほんとに不気味すぎる… ルークたち生徒会メンバーがみんなで協力してる感じはかっこいいんだけど、それ以上に「まだ見つかってないお兄ちゃん」のことがすごく気になるよ。 ツララの「きっと生きています」って台詞、あれすごく優しかったな。でもそのあと屋上から見つめてる赤い目の影が怖すぎて、早く続きが読みたい…!