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「だからさ、今のみんな有夏が欲しい物ってだけでしょ。そうじゃなくて2人の記念の……」
ムスッとした表情で有夏がヨーグルトの蓋の裏をペロリと舐めた。
今日は白桃のヨーグルトだ。これは幾ヶ瀬が好きなものである。
「……じゃあ、やわもちアイスにする? おいしいし、アレだったら幾ヶ瀬も好きだろ。それか、このさいダッツ? 高級アイス?」
「うん、だいぶ近付いてきたよ! うーん……けど、そういうことじゃあ、ないんだな」
「なにこれ。クイズ?」
何て噛みあわない会話だろう。
クイズというわけでもないので幾ヶ瀬も黙ってしまう。
その沈黙を、有夏は珍しく深読みした。
「記念って、まさかエロいカッコでプレイとか!?」
「えっ?」
「まさかハダカエプロンとか考えてんじゃ?」
瞬間的に想像が広がったか、幾ヶ瀬が白目を剥いた。
「……いや、違うな。有夏の裸エプロンはどう考えても罰ゲームって感じで、肝心のエロさが感じられないな。恥じらいなく着てそう。それはちょっと……違うんだな」
「まさかの駄目出し!?」
いっそ俺が着る方がイイのかも……なんてブツブツ言っている。
それはそれで気持ち悪いに決まってんだろという、有夏の微妙な目つきをものともせず幾ヶ瀬は立ち上がった。
「俺、思い切って着るよ!」
「はぁ?」
「恥ずかしいけど、有夏が望むなら裸エプロン……」
「いやいや、望んでない。望んでない。それこそ罰ゲーム!」
「え、それどういう意味……」
話が妙な方向へ飛び、思いもよらぬポイントへ着地しそうで恐ろしくなる。
「そもそもそんなカッコしてどうする気だよ。有夏にどうしろっての」
これには幾ヶ瀬もポカンと口を開ける。
「いやまぁ……帰ってきて俺の格好見て、ビックリしたぁとか言ってくれたら……」
「それだけかよ! そらビックリするわ!」
「それだけって……」
残ったおにぎりを保存パックに移し替えながら、幾ヶ瀬は肩を落とした。
「大事な日なのに本当に覚えてないんだね、有夏は。何か最近、俺ばっかり頑張ってる気がする」
「な、何だよ、有夏だって……」
いつになく気落ちした声色に、有夏が戸惑いの声をあげる。
「有夏だって何? 有夏が頑張ってるのってドラクエだけじゃん」
「そ、そんなこと……」
「セックスに不満を言うだけじゃん。たまには有夏も頑張ってよ」
「ふ、不満なんて言ってねぇだろ」
語尾が跳ねあがりそうになるのを、これでも堪えたのだろう。
だが、幾ヶ瀬に気遣いが通じた様子はない。
「言った! マンネリだって言ったもん!」
「しつこっ!」
このやりとり何度目だ!?
第一有夏は「マンネリ」なんて言った覚えはなかった。
それとなく匂わす言葉を吐いたことは事実かもしれない。
そのおかげで変な男娼館やら妙な芝居プレイをさせられる羽目になったのは記憶に新しい。
【つづきは明日更新です。ごめんよ、待ってておくれ】