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紫side
昔、といっても100年前くらい、桃くんに言われたことがある。
紫「しゃべる?流氷が?」
桃「そ、喋るの。」
確か、俺が初めて冬の見回りをすることになった時に聞いたこと。
初めてだから、と経験豊富な桃くんに教えて貰いながら見回りをしていた。
雪かきの時は破片が無くならないように注意すること
月人が来たときは滑らないように走ること
そして、最後に流氷割りをしていた時に、突然桃くんが話し出した。
紫「流氷も俺たちみたいに生きてるってこと?」
桃「んー、それとはちょっと違うかな」
桃「俺たちの不安、焦りとかのマイナスな気持
ちを大きくして跳ね返す。」
桃「だから、流氷の 前ではいつも心穏やかでい
なきゃいけな い。」
桃「って、先生は言ってた。」
紫「ふぅん…」
この時は、そんなにちゃんと聞いていなかったんだ。
生きてもいない流氷が話すなんて、信じられなかったから。
紫「謝らなきゃ、なぁ…」
あのまま、橙くんの背中を押してしまっていたら、どうなっていたのだろう。
きっと、俺が言い訳をすればみんな信じてくれるのだろう。
みんなは優しいから。
「紫ーくん、」
突然肩を叩かれ、反射的に振り返ると同時に優しい声が降ってくる。
紫「…橙、くん」
橙「深くは聞かんけど、俺とペアが嫌なら変え
てもらう? 」
本当に、優しい。
理由も分からずただ拒絶されて
怒らないどころかペアを変えようとするなんて。
紫「俺は、」
橙「ん、?」
そんなに優しく笑わないで。
紫「俺は、さ」
紫「橙くんがだいすきなんだ。」
橙「俺も好きやで」
紫「でもね、俺は橙くんが怖い」
紫「優しくて俺より強い橙くんが大好きで、憧
れてる。」
自分でも、異常だと分かっている。
橙「俺も紫ーくんのこと尊敬しとるよ」
そうじゃない、違う。
紫「橙くんはいつでも優しいね、」
でも。
紫「でも、俺の気持ちは君には分からない。」
こんなこと、言いたいわけじゃないのに。
橙side
あれから、紫ーくんとは何となくぎくしゃくしたままで。
いつも通りの会話
いつも通りの笑顔
なのに、なんでだか距離を感じる気がする。
橙「いっそ、聞いてみるのもありやんな、?」
流氷を前にして座り込んでいる紫ーくんに近づき、肩を叩く。
俺より少し小さな体が大きく跳ねる。
紫「嫌ッッ!!」
橙「えッ、」
視界が回る。
少し暗い雲。
そして
紫色の光が離れていく。
嗚呼、俺、帰れるかな。
目を開けると、紫色の瞳が揺れる。
橙「帰って、きた、?」
紫「ごめんなさいッ、ごめんなさい、ッ」
右を見ると、泣き崩れる紫ーくん。
しきりに謝り続けている。
橙「俺の方こそごめん」
橙「驚かせてしもたな笑」
紫「なんでッ、許すのさ、ポロポロ」
怒れるわけがない。
ところどころ欠けた顔
剥げた白粉
ひび割れた身体。
こんなにボロボロになって
俺の体を探してくれたんやね。
橙「ありがとう」
紫ーくんの頭に手を伸ばす。
少しひび割れた紫ーくんの欠片が落ちるのが見える。
橙「こっちおいで」
手招きすると、遠慮がちに近づいてくる紫ーくん。
橙「こんなボロボロになってしもて…」
小さな欠片はきっと流氷に巻き込まれているのだろう。
橙「少し足りんなぁ、 」
あいにく今は代わりになるようなものがない。
紫「髪は、?」
橙「でも、」
紫「おねがい。橙くんが切って」
紫ーくんは比較的髪が長い方だ。
俺は美しく光る紫色の髪がだいすきで
本音を言えば、切って欲しくはない。
でも、紫ーくんの頼みだし、仕方ない。
橙「切るで、?」
紫「…はぁい、」
一段と髪が短くなった紫ーくんが恥ずかしそうにこちらを見あげる。
紫「…どう、?」
橙「…似合ってる」
少し寂しさを感じつつ、足りないところを補っていく。
紫「ありがとう」
橙「これくらいいつでもしたる」
紫「んーん、違うの」
紫「俺、橙くんが居なくなったら、ってちょっ
とだけ考えてた。」
橙「…そっか。」
紫「でもね、俺、橙くんが居ないと髪も切れな
いって分かった。」
橙「なんやそれ笑」
紫「橙くんがどこへ行っても、離れないから」
橙「大丈夫。」
どこへも行かないから。
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