テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
10
#オリキャラ
ゼロ・ウルフ
1,952
#ぺいんと愛され
Nera🍀︎❄🐈⬛
118
#CR
兎ゞ亜 @はじめたばかり
16,294
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
───イクジナシ。
これが、自身のクラスでいじられ、中学でいじめられ、小学校でいじめられ続ける原因だった。
だからこそ、知られたくなかった。しにがみくんに、知られたくなかった。
汚名のような自身のそれを。 自身の情けない過去を。 自身の”普通じゃないから”と避け続けられる原因を。
「───しにがみくん、ごめんね」
いろいろ、自身の過去や彼の過去を彼に聞かせてあげた後、俺は謝った。
ずっと彼に言っていた慰めの言葉は、まるで自分に言い聞かせるために言ったようなものだと。
ずっと彼に話さなかった自身の過去は、まるで見ざる聞かざる言わざるのように哀れに見向きもしなかったものだと。
「───じゃあ、仲直りできます?」
え、と驚きの声が出たのは俺とぺいんとだった。2人して驚いたため、少し笑ったが、なぜ彼がそう言うのか分からなかった。
困惑が顔に出ていたのか、相手は少し笑いながらも言葉にした。
「僕も、謝罪の言葉は聞きたくありません。その代わりとして、2人のすれ違いを正してください」
その言葉に、ぺいんとは大笑いした。
「───じゃあ、しにがみくんも」
「へ?」
ぺいんとの言葉に、今度はしにがみくんが驚く番となっていた。
「いろいろ迷惑かけちゃったから謝ろうと思ったけど、謝罪の言葉は聞きたくないんでしょ? だったら───その代わり、俺と仲良くしてよ」
にか、と笑う彼の笑みは、どうも昔に戻ったような感覚に陥れられた。弧を描くまつ毛、風に揺れる髪、歯を見せる綺麗なほどの口に、しにがみくんは頬を染めて笑った。
「───僕からもよろしくお願いします」
…………………………
屋上からは、3人の話し声が微かに聞こえた。
話し合いの次は過去の話、過去の話の次は謝罪、謝罪の次は仲直り。
うん、何とも素敵なハッピーエンドだろう。きっと、誰もがそう思うけれど、少し違うハッピーエンド。
これはきっと、トゥルーエンド。
トゥルーエンドでもあるハッピーエンドより素敵なもの、この世にあるのだろうか。
「───”イノチシラズ”と”イクジナシ”、結構好きなあだ名だったんだけどな」
屋上の扉につく窓から眺めながらそう言葉をこぼしたのは自分───トラゾーだ。
きっと、自身は”イクジナシ”に覚えられていないかもしれない。
───あの村の全焼事件は、自分の目でハッキリと見た。なんてったって、その場にいたから。それでいて、自身は1人の男の子を助けた。
『痛いです。助けてください』
あの日の少年の言葉には、どこか生気を感じた。まるで、自身とは違う”生きたい”と願う気持ち。
『───あなたも”イノチシラズ”?』
自分が”イノチシラズ”であれば、きっと楽だった。
けれど、彼の”生きたい”と熱意のこもった瞳を見た瞬間、あの日の全焼事件で”死ねるチャンスが回ってきた”と考えた自分の思考がバカらしくなってきた。
(すごいな、この子は)
俺は彼を必死に手当てした。相手は自身のことを救助隊と言っていたが、相手はこめかみ付近から流れる血液のせいで自身のことを大人だと誤認したのだろう。
まあ、それもそうだ。人よりかは筋肉も少しあったし、身長もそれなりにはあったため勘違いしてもおかしくはない。
「───死にたかったなんて、普通じゃないからなあ」
誰にも言えなかった。
あの全焼事件の真犯人が親だったなんて。保護されるのも施設に入るのも嫌だったから逃げた。
でも住むところがないのであれば、死ねば楽だった。何もかもから解放されるのだと思った。
きっと、彼に会わなければ俺はただの”死人”。でも今は、違う。
「───みんなと同じで嬉しいなんて、やっぱ俺、普通じゃないね」
親が犯人だといじめられてきた。でも実際もう親は捕まったのだからどうでもよかった。
普通じゃないからと囁かれる日々が辛かった。けれど、普通じゃなくてよかった。でないと、きっと彼らと巡り会えなかった。
それでいて、”イノチシラズ”のことも助けられなかった。
自身は物語を傍観できたら、それで十分だった。
「───バカなの?」
屋上に続く扉から離れ、階段を数段降りた時だった。
バン、と勢いよく開いた扉は、眩い真昼の太陽をこちらへ浴びせた。目の前に立つのは、ぺいんと、しにがみさん、クロノアさんだ。
どうやら、窓から見ていたことがバレてしまったらしい。
「お前も、サボる?」
ぺいんとの言葉は、本当に嫌い。うざい。的確なところをついてくるのが痛くて嫌い。
「───うるさい」
その日、屋上で肌をこんがり焼いた太陽も嫌い。
……………後日談……………
「………」
ピ、と音を鳴らしながら落下するおつりの音が激しく聞こえる。静かな校舎裏には人気がなく、少し清々しい。
頬を掠める風は心地よい。
「……ふぅ」
背中を伸ばしてから、息を一つついてベンチに座った。手の中に収められているのはあたたかなココアだ。
プルタブを勢いよく開け───
「………」
いき、おいよく………開けて………!!!
「ぐぬぬ……」
指が痛い!!!!プルタブ!!指が痛くなる!!!
いつも悪戦苦闘をするこのココア缶との決着は未だにつかない。一応高校三年生をやっているが、1年から勝てたことはない。0勝692敗中で、一回でプルタブを開けるという偉業をこなせない自分の握力に呆れる。
「ぐはあ……!」
考えると項垂れてくる。1人だからこそこの姿を見られないからいいのだが、クラスでは絶対こんなにリラックス状態ではいられないだろう。
「───開けましょうか?」
ふと聞こえた声に、慌てて体勢を直す。声の聞こえた方向に視線を向ければ、そこにいたのは背の低い男の子だ。
彼を見て、なんだ、と体勢をまたリラックスさせた。
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
相手にココア缶を差し出すと、相手は受け取ってすぐにカコッ、とプルタブを開けた。
「はい、どうぞ」
同じく隣に座るベンチの2人に、今日もまた大笑いされる。
「クロノアさん、やっぱ普通じゃないっすよ!! そろそろ筋トレしたらどうっすか?」
「クロノアさんもそうだけど、ぺいんとだって開けれないくせに!」
トラゾーとぺいんとは大笑いしながらも、お互いに普通じゃないと笑い合う。
その2人を見て、俺は彼を見る。
「───クロノアさん、普通じゃないですね。早く開けれるようになってください?」
嫌味ったらしい。どうも、この後輩は生意気になったものだ。
「───しにがみくんもね」
それ相応の先輩になれるよう、尽くそう。
そう思うまでに何年もかかってしまったが、仕方ない。
これはとても難しい問題だった。
『プルタブの開け方』と同様、それはすごく難しい。