※この物語はフィクションです。
実在の人物及び団体、事件などとは一切関係ありません。
〈File65:崖の間の思惑〉
突然視界が開けたと思ったら、智世は前のめりにバランスを崩した。
目の前は、崖。
「智世!」
また私の手は、なにも掴めなかった。
私の指は宙をかき、智世の指に掠りもしない。
恐怖に強張る智世の青い顔に、私の手が届かない場所に逝ってしまった人たちの顔が重なる。
母、祖母、祖父、そして……。
「――ッ!」
無謀だってわかってる。
それでも智世に手を伸ばすためだけに、私の身体は動いていた。
残影を振り切るように、地面を強く踏み切る。
浮遊感に内臓を突き上げられ、風に髪を弄ばれながら、私の手は智世の指先を掠めた。
けれど――。
「任せたぞ、ケント!」
智世が私の手を払いのける。
「な、んで――!」
直後、私の身体は有無を言わさぬ強い力で**********************
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