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「コンニチハおばちゃん、私の名前はアヴァリティアだよ、人呼んで『|強欲《ごうよく》のアヴァリティア』って言うんだよ」
六階の大きな扉を開けて、室内へと踏み込んだコユキの目の前には、本人曰く『強欲のアヴァリティア』が不敵そうな笑顔を浮かべて立っていたのであった。
「うん、こんにちは…… ってアンタが『強欲』の大罪なの?」
挨拶を返したコユキが疑わしそうに、自称『強欲のアヴァリティア』に質問をした。
ここまで上ってきた経験から、目の前の存在が大罪とは、到底信じる事が出来なかったからだ。
なにしろ、自分の前に立っているのは、どう見ても十歳位にしか見えない少女、それ以外の何者でもなかったからである。
ドール風と言うのだろうか、フリル一杯の赤いフレアドレスに身を包み、首元の黒いチョーカーリボンが見た目より大人びた印象を与える。
腰に手を当てて胸を張る姿からは、気の強さを感じさせ、少し吊り目気味の大きな瞳も、自信満々にニカッと笑う口角の上がり方もそれを裏付けているようだ。
亜麻色の長い髪をツインテールにしているが、手入れがいいのだろう、室内だというのにキラキラとキューティクルが輝いていた。
例えるなら、カードキャ○ターさ○らの友人、大道○知世が、さく○推しをやめて、セルフプロデュースにガツガツ精を出した結果、そう言えばお分かり頂けるだろうか?
「そうだよ、聖女のおばちゃん、おばちゃんはどんな物が欲しいの? 富? それとも名声かな? はたまた保身? 私が全部叶えてあげる! 私はここに来た人間の願いを叶える『福の神』なんだ! さあ、何でも良いんだよ、おばちゃんの望みを言ってみて!」
――――このちびっこが? ……大罪? 福の神だと…… いや、しかし、望み、か…… ふむ
少し考えてから、コユキは答えた。
「ふむ、富、お金が必要なのは分かるしいっぱい欲しいって人間は多いだろうね、名声ってかキャーキャー言われたいっていうのも良く分かるわよ。 保身は、不老不死とか健康とか、守ってくれる誰かとか? う~ん、イマイチはっきり分かんないけどそんな感じよね? まあ、それも分かるわ。 分かりはするんだけどねぇ、それって、満たされていない人が欲しがる物って事だよねぇ、持たざる者の望みって感じでしょ? アタシはもう殆(ほとん)ど持ってるんだよね~、カンストしちゃってんのよね、ごめんだけど」
いい女風をビュービュー吹かしながら、いけしゃあしゃあと言い切るのだった。
完全に手ぶらで、裕福そうにも、人気者にも、健康的にも一切見えないコユキの風情に首を傾げているアヴァリティア。
コユキは説明を続ける。
「例えば富、お金を一杯手に入れて何をするかって事よ。 流行りの服? 高級車? 大きな家? 傅く(かしずく)使用人? 高級料理店の食事、まあそんな所でしょ? 毎年毎年馬鹿みたいに新しい服や靴買うのも面倒だし、そもそも出掛けたくないのよね、それに広い部屋だと動かなきゃならないじゃない? 今のアタシの部屋はセンターで座ったままで、何でも必要な物には手が届いて楽チンなのよね♪ 家の中に家族以外の人がウロウロしてるのなんて落ち着かないし、美味しいご飯ってんなら、善悪、アタシの相方の『聖魔騎士』(キリっ!)なんだけど、作ってくれる料理がメチャクチャ美味しくてね、何より気取った料理屋さんやレストランと違って、大量に作ってくれてお代わり無制限なのよ♪ それに、いくらお金があった所で、『ゲロゲロ』が復活する訳じゃないし…… よしんばお金の力で復活させて、元の作者さんに執筆して貰ったとしても、往時の迸る(ほとばしる)様な情熱までは甦らせる事は出来ないでしょうしね…… つまりアタシにとって、今更必要以上の財力で手に入れたい物とか、良く考えてみなくても皆無なのよん」