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戒め業を始めてから、数日。

連日連夜、欲にまみれた貴族たちを懲らしめてきた。

転生者でもない人間を相手にするのは造作もなくて、少しだけ痛い思いをしてもらったらすぐに、彼らは許してくださいと泣いて詫びた。


――思ったよりも簡単な仕事だわ。

今日も大きな庭を持つ館に忍び込んで、本人の寝室に。

というか、大体が三階から五階の部屋で大きな窓を開け放っているから、飛翔を使える私とシェナにはただただ都合が良かった。


目標の貴族はまだ起きていて、一人でお酒を飲んでいる。

……特注だろう、巨大なソファにずっっしりと腰かけて。

そいつが、月の光を遮った私たちに気付いたらしく立ち上がり、その巨体を揺らしながらこちらに向き直った。



「貴様が|竜姫《りゅうき》……ドラゴンフェイスか。なるほど? 露出が好みだとは聞いていたがその通りらしいなぁ?」

野太い、品のない声。

この男は商業区の三分の一を治めている、大貴族の一人。

これまで懲らしめてきた貴族の中でも、とびぬけて醜悪な姿をしている。


容姿をとやかく言うつもりはないけれど、あまりにも太った体に、性根の腐った感じがそののまま滲み出たいじわるな顔つき。

ぶよぶよに太った指には、これでもかというほどゴテゴテした指輪をほとんどの指に着けている。

その巨体を包むバスローブらしき布も、そいつが着ているというだけで醜悪に見えるから不思議だ。

名前は……気持ち悪さで忘れてしまった。


「ドラゴンフェイス。その仮面と服を剥ぎ取って、いいように遊んでやろう」

「きも。それからその呼び名、やめていただける? 私はヨモツヒルイ。黄泉より報いを与えに来た者……あなたの悪行を|戒《いまし》める」

「カッカッカ! 本当にそう名乗るとはな! クックック、馬鹿か。のこのこと儂の部屋に入って来るとは。他の貴族を脅して回っているようだが、この儂には通じんぞ!」



――戒め業をしている時は、ヨモツヒルイと名乗っている。まさか、サラと言うわけにはいかないから。

シェナのコードネームは、ナナにした。呼びやすくて可愛いのがいいと思って。

姿については、私の意見が通ることなく、あのまま――。


魔王さまのくれたアオザイ風の黒い衣装は、やっぱり露出がすごくて。

帯剣ベルトをしなければ、格好いい金糸の刺繍が入った……布。多少の厚みと着心地はいいものの、布だった。


下半身の心もとなさはスカートの比じゃない。パンツも……ひもパンじゃないと下着感が強過ぎて他のを履けないし。

胸の下にも紐を通して留めるように出来ているけど、むしろ胸を強調することになっている。

谷間は半分くらい、横からも丸みがはっきりと見えているし。


竜王さんの竜の顔をモチーフにしたドミノマスクが無ければ、露出女と呼ばれていたかもしれない……。



「皆さんそうおっしゃるのだけど……最後には泣きながら許しを請うわよ? あなたはいつまでその態度でいられるかしらね」

ちなみに、衣装はシェナもお揃いだ。

……それなのに、シェナにはゆったりめのズボンがある。不公平過ぎる。


「貴様こそだ! 絶対に逃がさんぞ? それ、囲め!」

醜い貴族は、私たち用に準備していたのだろう。

どたどたガチャガチャと、鎧に身を包んだ大きな男たちが十人ほど雪崩れ込んで来た。

戒め業をやり出してまだ日が浅いのに、もう手を打ってきたとは。


「たくさん居るわね……。でも、どれだけ居ても意味ないのに」

「ほざけ! おいお前ら、殺すなよ? 弄んでやるんだからな」


「本当に言うことが気持ち悪い」

他の人たちも、似たり寄ったりだったけど。



と、そんなことを思っている間に、前列の三人から距離を詰めてきた。

手には……剣ではなくて、傘の持ち手のような、先端の曲がった得物を持っている。

――本当に捕まえる気なんだ。

あれで捕まったら……と、一瞬でも想像したことを後悔した。


でも、私が気持ち悪さで怯んでいる内に、シェナがその三人を薙ぎ払ってくれた。

見た感じ、ネコパンチだったように思う。


素早い動きで右端の男の足元に飛び込み、身長差を埋めるための跳躍と共に放った、フック気味の手首の振り抜き。

たったそれだけで、シェナの二倍とまではいかずとも……という大きな男を三人まとめて、壁まで吹っ飛ばした。鎧も着込んでいるのに。



「あ……れ?」

声が出たのは醜い貴族だけだったけど、他の全員も、唖然として動きが完全に止まった。

「どう? まだ続ける? 内臓……口から飛び出ちゃうかもしれないわねぇ?」

――シェナは全員を打ちのめしたいだろうけど、後で治してあげるのは私だから。


「えっっっと、俺達は……。前金は帰すぜ。無理だ無理。こいつらの力、転生者じゃねぇか」

「んだよ! 先に言っとけっての。やってられっか」

男たちは、そんなようなことを口々に、ドアから普通に歩いて出て行った。


「お、おい。誰だ、普通の義賊みたいなやつだと言ったのは。わ、儂も聞いとらんぞ……」

確かに、今まではこんなにふっ飛ばさなくても、剣技で制圧出来ていたから、そこまで強いとは誰も思わなかったのかもしれない。



「で、どうする? 悔い改めて人々のために生きるなら……今回だけ様子を見てあげる」

これは、殺さないであげる、という意味。

出来るならあまり近付きたくないので、距離はそこそこに開いたままで告げた。


「ゆ、許してくれるのか」

醜い顔を、必死でこびへつらう笑みに歪ませながら手もみしている。

「許す? なんで許さないといけないの? あなたの悪行は、もう許してもらえる程度じゃないのよ。分かっていないなら、その身に少しでも刻んで教えてあげる」


「いややややややや、やめ、やめてくれ! なんでもする! わ、儂は痛いのは――」

そんな風にしても、やめてと泣き叫ぶ女の子たちに何をしたのか。

「大丈夫よ。あとで治してあげるから」


絶叫なんて聞きたくないから、喉を先に潰しておく。

あとは……責め苦を味わった女の子たちが、少しでも気が晴れるように――。


聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~

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