その後は次々に連れ回された。
そして、時刻は午後の7時を指していた。
空は夕日ではなく、夜だ。
明るい星も見えてきた。
「ねぇ、そろそろ帰ろうよ。今何時か知ってる?」
少女にそろそろ帰ろうと促した。
「まさか時雨くんって夜が怖いの?」
変な誤解をされたようだ。
「何でそうなるんだよ。もう7時なんだよ。だから帰る」
「うん、7時だからなに?
さぁ、今から山登るよ〜!」
「はぁ!?山!?」
こんな時間から山かと驚いたが、
本当に山に連れて行かれた。
けれど、自然と心細くはなかったし、
なぜか明るいように感じた。
それは少女が隣に居てくれたからだろう。
少女はすごい。
仲良くない人にまで明るさを与えてくれる。
これなら誰が好きになってもおかしくない。
まるで昔、遊んでいたあの子みたいだ。
でも、あの子の名前が思い出せない。
「何ボーッとしてんの?早く行くよ!」
「あ、ごめん」
山の上まで少女は明るく登った。
疲れた僕とは正反対だ。
こんなにも明るい子が病気とは思えない。
本当に、こんな子が病気なのだろうか。
病気というのは真っ赤な嘘だと言ってほしかった。
そんな思いが自然と湧き上がっていた。
なぜだろうか。
少女は空を指さし、明るく喋り出した。
まるで僕の思いを消すように。
「ほら見て!綺麗だよ!」
少女の指さす空を眺める。
そこには綺麗な夜空が広がっていた。
アニメの夜空のようだ。
よく見ると、流れ星も降っている。
「知ってた?今日はオリオン座流星群が降る日なんだよ?」
どうやら少女は夜空に詳しいようだ。
「そうなんだ。だから流れ星が降ってるんだね」
少女は手と手を組み、お願いポーズをしている。
流れ星に向かって願っているのだろう。
「病気が治りますように…」
聞こえてしまった。
本人は聞こえてないと思っているのだろうが、
しっかり聞こえてしまった。
少女は怖いはずだ。
死にたくもないだろうし、
もっと生きていたいはずだ。
それなのに死と隣り合わせになって、
いつ死ぬかわからない状況になって。
少女は人生の中で1番怖い思いをしているだろう。
僕も手と手を組み、願い事をしていた。
──彼女の病気が治り、長生きできますように…
と、心の中で呟いた。
コメント
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さっそくいちゃいちゃしてて大変よろしいですわねぇ( ◜ω◝ )ニチャア れうが書くお話は全部切ない系だから、ここから少しずつ平和な時間が崩れ去っていくのかと思うと…… でも面白いから読んじゃうぜ…続き待機…