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薬が効いたのか、いつの間にか眠っていた。
目を閉じる直前、胸の奥にじんわりと心細さが広がっていて、普段ならあり得ないことだけど
会長でもいいから、誰かにそばにいてほしいと思ってしまった。
……ワガママを言ってしまったな、と後から思う。
帰ろうとしていた会長の腕を、無意識に掴んで引き止めてしまったのだから。
意識がゆっくりと浮上し、瞼を開ける。
部屋の電気は消されていて、常夜灯だけが淡く灯り、室内をオレンジ色に染めていた。
(……会長が消していったんだろうな)
ベッドから身を起こし、まずはトイレへ向かう。
ジャー
バタン
トイレの後は手洗いし洗面所で歯を磨き、今日は風呂はやめて、朝シャワーを浴びようと決めた。
歯磨きの後は、いつものようにマウスウォッシュも忘れない。
「ふわぁ……」
眠気がぶり返し、大きな欠伸が出た。
少し喉が渇いて、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。
ベッドに戻ろうとして、ソファの横を通り過ぎようとした、その時
ボトッ
手から滑り落ちたペットボトルが、床に当たって転がった。
角が凹み、コロコロと音を立てて止まる。
さっきはソファの前を通らなかったから、気づかなかった。
今、目の前には
ソファに横になり、眠っている会長の姿があった。
……まだ、居てくれたんだ。
何か掛けるものでも探そうと、そっと離れようとした瞬間、
グンッ
腕を引かれ、バランスを崩して、そのまま会長の上に倒れ込んでしまった。
「起きたのか」
「会長こそ……起きてたのかよ」
「ペットボトルが落ちた音で目が覚めた」
「それは、ごめん……」
「でもさ、会長がまだ居るなんて思わなくて、正直驚いた」
「鍵、オートロックじゃないだろ。外から閉めないといけない」
「俺が持ち帰ったら、翌日困るだろうからな。仕方ない。起きるまで待つことにした」
「……それは会長、本当に悪かった」
心から、そう言って頭を下げた。
「いい。別に」
「部屋にあった漫画、勝手に読ませてもらったしな。少年漫画や少女漫画だけかと思ったら……男同士の漫画も置いてあるんだな」
「なっ……!」
ガバッと跳ね起きて、慌ててソファから距離を取る。
「な、何見てんだよっ……///」
「一冊取ったら、奥にさらに本があったからな。試しに取ってみただけだ」
「カモフラージュのつもりか? 正直、隠しきれてない」
一気に顔が熱くなる。
よりによって、会長に
そもそも、今まで誰も部屋に入れてなかったんだから、簡単な隠し方でも良いだろ……
(薄い本は、さすがに見つかってないよな……?)
「別に、俺は偏見ないぞ
ぼそり、と呟いたその声が、夜の静けさのせいで、やけにくっきりと耳に届いてしまった。
(偏見がないのはありがたいけど、それでも人に見られたくないものって、あるだろ)
「初めて読んだが、意外とストーリーは面白かった。普段は歴史小説ばかりだが……海外でも漫画が人気な理由が、少し分かった気がする」
――会長、
そんな冷静に分析しないでくれ……
オレのBL漫画、読まれてる……
商業誌なのが、せめてもの救いだけどさ……
「……会長」
少し間を置いてから、恐る恐る口を開く
「オレ、もう起きたし……帰る?」
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