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#シェイプシフター
柊遊馬
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#戦国時代
眠狂四郎
284
#戦国時代
眠狂四郎
196
#軍師
眠狂四郎
153
酒の神ディオニソスは、従者シレノスを手厚くもてなした礼として、
ミダス王へ言った。
「望みを一つ叶えてやろう。何が欲しい。」
ミダス王は迷わず答えた。
「触れたものすべてが黄金になる手をお授けください。」
翌朝、その願いは現実となる。
石も、木も、花も。
手に触れるものすべてが黄金へ変わった。
「やった……これで国は豊かになれる。」
喜びのあまり、王は妻へ駆け寄った。
「見てくれ!」
そう叫んで抱きしめた瞬間――。
最愛の妻は、冷たい黄金の像へと変わってしまった。
「ああ……。」
ミダス王は悲痛な叫び声をあげ、崩れ落ちる。
「違う……。」
「私が欲しかったのは、黄金などではない。」
「この黄金で国を豊かにし、」
「愛する妻と、幸せに暮らすことだったのだ……。」
アントン、ライナー両軍は、アンゴラ湾を望む半島の岬――アクチムで激突した。
アントン軍、軍船二百三十隻。
ライナー軍、軍船四百隻。
ジュリアス暗殺から始まった内戦は、ついに決着の時を迎えようとしていた。
中央後陣には、「動く王宮」とも呼ぶべきイージプ艦隊が控える。
黄金で飾られた巨大旗艦を中心に、
幾重もの軍船が女王シャチトルを守るように並び、
その威容は海に浮かぶ宮殿そのものだった。
アントンは十層にも及ぶ巨大旗艦の甲板から、戦場を静かに見渡す。
やがて、ライナー艦隊が動いた。
先頭を進むアグリ艦隊は、正面からぶつかることなく、
アントン軍の右側面を奪うように針路を変える。
「考えることは同じか。」
アントンは小さく笑った。
「戦艦を盾にしろ! 右から回り込ませるな!」
巨大戦艦がゆっくりと進路を変え、海を塞ぐように立ちはだかる。
その間にも、敵艦から巨大な銛が次々と飛来した。
しかし、アントン軍はあらかじめ立てた鉄板でこれを受け止める。
そして、そのまま巨大戦艦の巨体を生かした体当たりで敵を押し潰す――。
アントンは、その反撃の瞬間を静かに待っていた。
ガイロは、敵陣の奥に翻るライナー王の軍旗を見つけた。
「あれがライナーの旗艦だ。」
彼は剣を高く掲げ、全軍へ叫ぶ。
「あの船にライナーがいる!」
「討ち取り、グラン凱旋の先頭を飾る者は誰だ!」
「おおおおっ!」
兵たちの雄叫びが海を震わせる。
ガイロはアントン本隊と歩調を合わせ、左旋回を開始した。
互いに敵の側面を奪おうと、主導権を巡る激しい駆け引きが始まる。
(今度こそ……。)
先の海戦で敗れたことが、敵へ主導権を与えた。
その屈辱は、いまだ胸に焼き付いている。
ここで勝たなければ、自らは海軍大将たる資格を失う。
「中央艦隊も前へ出せ!」
「何としてもライナー軍の左を崩すのだ!」
副官が慌てて進み出た。
「ですが、それでは後衛のイージプ艦隊がむき出しになります!」
「構わぬ!」
ガイロは即座に言い放つ。
「女王陛下にも前線へ出ていただく。」
「その方が包囲しやすい。」
イモホテップは、両軍が側面の主導権を奪い合いながら、
左右へ大きく広がっていく様子を静かに見つめていた。
「……どちらが勝っているの?」
シャチトルが不安そうに尋ねる。
その時だった。
風向きが変わる。
イモホテップは空を見上げ、静かに目を閉じた。
「その問いの答えは――イスカンダルで分かることでしょう。」
「……え?」
シャチトルが聞き返す間もなく、イモホテップは声を張り上げた。
「帆を張れ!」
「全速前進!」
「敵軍中央を突破する!」
「!!」
シャチトルは思わず彼を見つめた。
何を言っているのか、理解できなかった。
両軍はいまだ激しく戦っている。
勝敗など、まだ誰にも分からないはずだった。
それなのにイモホテップだけは、まるで結末を見届けた者のような目をしていた。
戦場のすべての軍船は帆を降ろしていた。
海戦では風は味方にも敵にもなる。
帆は動きを鈍らせ、敵の銛や火矢の格好の的となるからだ。
だからこそ、誰も帆を張らない。
その常識を――イモホテップは覆した。
イージプ艦隊だけは違った。
すべての軍船が、畳んだ帆を積み込んでいた。
「帆を張れ!」
一斉に白い帆が風を受ける。
イージプ艦隊は戦場の中央へ向け、一気に加速した。
「……なぜだ。」
異変に気付いたアントンは、戦場の中央へ視線を移す。
次の瞬間、すべてを悟った。
「あの船を追え!」
待機させていた高速船を、自らの旗艦へ横付けさせる。
アントンは迷うことなく飛び移った。
「急げ!」
一方、ガイロもまた中央の異変を目にする。
「……そういうことか。」
彼の顔色が変わった。
「あの船を逃がすな!」
「全艦、中央を突破しろ!」
副官が思わず叫ぶ。
「ですが、それでは戦列が――」
「構わん!」
ガイロは怒鳴り返した。
「あの船を失えば……我らは破滅だ!」
イージプの軍資金のほとんどは、シャチトルが乗る旗艦へ積み込まれていた。
莫大な黄金。
宝石。
王家の財宝。
王国の未来、そのすべてを積み込んだ船。
それこそが、この戦争における――黄金の船だったのだ。
コメント
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# はる。の感想 第42話「黄金の船」、めっちゃ熱かったっす! 冒頭のミダス王の寓話から入るのが渋い。欲に目がくらんだ結果の悲劇——それが「黄金の船」の伏線になってるのが読めてから震えたわ。イモホテップが「帆を張れ」って叫んだ瞬間、背筋がゾクッとしたね。戦場の常識を覆す切り札、最高です。 イージプ艦隊の「動く王宮」感も圧巻で、シャチトルが乗る旗艦が国の命運を背負ってる重みが画面越しに伝わってきた。アントンとガイロが同時に気づくシーンの疾走感、たまらんかったっす。 次回、どうなるんだ…!🔥