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おかしい…。
いくら待っても、トリスタの帰ってくる様子がない。
「ねぇ、そろそろ私たちは寝るけど…あんたはどうするの?」
ローリーが心配した表情で私に話しかける。
私は焚き火を見たまま言う。
「まだここにいるわ」
「そう。…別にトリックスターの事を心配するのは勝手だけど、キラーであることは忘れないでね」
「分かってるわよ。」
「それなら心配ないわね。じゃ、おやすみ」
「ええ。おやすみ」
ローリーの足音が徐々に聞こえなくなってくる。
「…まだかな…」
昨日あの告白を告げられてから彼の姿が見当たらない。
川の方まで探しに行ったり、私の知ってる範囲で森の中を探したりしたが、彼の姿はどこにも見当たらなかった。
「どこに行ったんだか…」
ローリーの言う通り、彼は今はサバイバーだが元々は私たちを何度も殺したキラーなんだ。
でも、今は私たちの大切な仲間。
心配するのが普通だ。
《そんなに奴が心配か?》
私の耳元で男性とも女性とも分からない声が囁いた。
「っ!…え」
驚いて声のした方に振り向くと、蜘蛛のような足が何処からか生えていた。
奴だ…私をこの世界に無理やり連れて来た張本人…。
「エンティティ…!!」
どうしてコイツがここに…。
《初めてお前と話すな。それで?お前はどうしてトリックスターの事を心配しているのだ?お前達を殺すキラーなのだぞ?》
「それは…確かに彼は、私たちを何度も殺したわ。でも今は同じサバイバー。気にかけるのは当然よ。」
《ほう。実に面白い意見だ。あともう数刻でトリックスターはキラーに戻ると言うのに。》
「え…」
トリックスターが…キラーに戻る?
「ど、どういうこと!?」
《おっと、これは言ってはならなかったな。すまない、忘れてくれ》
「忘れられる分けないでしょ!?勿体振らないで教えなさい!」
彼がキラーに戻ることに抵抗はなかった。
しかし、一言も言わずに元の環境に戻るのは、たった数日間も仲間であった者からしたら少し気が晴れない。
《まぁ話したところで変わらないと思うが…。トリックスターは今、ゴーストフェイスに犯されている。》
「え?」
ゴーストフェイス…?なんでいきなりアイツが…。
それに、彼が犯されてる?
「意味が分からない…なんでゴーストフェイスがいきなり出てきたの!?」
《私もあまり深くは話せないが、どうもあのゴーストフェイス…トリックスターをメメントしたあと、彼をキラーに戻せと言っててな。》
「もしかして…あと少しでキラーに戻るってのは…」
《嗚呼。トリックスターが殺されるリミットが迫っているということだ。》
「嘘でしょ…」
《どうするんだ?》
「え?」
《お前はどうしたいんだ?彼を助けるか?それとも無理やり犯された挙げ句殺される彼を見殺しにするか?》
一体この邪神は何が目的なんだ?
「答える前に聞いてもいいかしら?」
《嗚呼》
「どうして私に協力的なの?」
《お前には、私の観ているエンターテイメントを盛り上げるスパイスになってもらおうと思ってな。》
「そうだと思ったわ…」
やっぱりコイツはクズね…。
《それで?今度はお前が私の質問に答える番だ。》
「私は…彼の気持ちを尊重してあげたい。彼がこのままキラーに戻りたい意思が強いのなら、私は彼を助けない。」
《ほぉ?しかし彼はお前に会いたがっているぞ?》
「私が話しているのは」
《お前達に殺意があるかどうかの話ではない。》
言っている途中に口を挟まれて黙ってしまう。
といっても、言おうとしたことを先に言われてしまっただけだが…。
《彼はお前に助けを求めている。同じキラー、ただそれだけの関係だった者に無理やり犯され、惨めに感じて甘い声を漏らしている彼の頭には、お前の顔しか映っていない。》
「だからって…」
《今助けに行かなければ、トリックスターは望まぬ展開で無理やりキラーに戻らされるんだぞ?》
「……」
どうする…助けに行くか?
いや、助けに行かなければ。
「分かったわ。そこの場所まで案内して」
《ふふっ、乗ってくれて助かるよ。精々私を楽しませてくれ。》
私の周りに霧が広がる。
待っててトリックスター…絶対に助けるから。