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口の中に残っていたコーヒーの一口をごくっと呑み下して、「前よりは……」とだけ答えるのが精一杯の私に、
「私も……前よりも、」
彼は、口の端でクスリと微笑って言うと、
「……惹かれています。あなたに……」
そう躊躇いもなく告げて、テーブルの際まで自らのイスを詰めると、真近に顔を迫らせた。
「先生……近すぎるので……」
不意に距離を狭められて、今度は私の方が座っているイスをずらして、後ろへ下がろうとすると、
「もっと、私に顔を寄せて……」
声をひそめてた彼が、
「……キスができるくらいに、そばに……」
耳をくすぐるように囁きかける。
「……ここ、お店の中ですから……」
つい逃げ腰にもなるけれど、
「何か、まずいことでも……?」
彼は全く意に介さないといった風で、さらに顔を近寄らせる。
「だから……お店だから……」
逃れられないと感じつつも、ささやかな抵抗を試みるも、
「軽いキスぐらいなら、いいでしょう?」
彼が口にして、本当に今にもキスをしそうな程に迫り寄る。
「ダメ……」
いやいやと首を振るも、チュッと頬に口づけられて、周りの目が気になり急いで顔を下へ向けた。
「ダメって言ったのに……」
俯いたまま、真っ赤になって呟くと、
「……私は、君をもっと好きにさせたいだけですから」
彼は、フフッといたずらっぽく笑って見せた。
──この人には到底勝てないことを、改めて思い知らされる。
だけどそれは決して嫌な感覚ではなくて、彼が私を好きでいてくれることに、自らも応えたいと心を衝き動かされる、そんな痺れるような甘い感覚にも思えた……。