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ご飯を食べたあと、馬車で王城まで向かった6人と伯爵。
伯爵はどこか緊張している様子なのに対して、6人はワクワクが隠せずにいた。
ただちょっと、、、いやだいぶ厨二病な一般ピープルの6人にとって、王様ご対面イベントはとてつもない一大イベント。
王様のところに行ったら、勇者かもしれない6人が勇者として認められ、良い暮らしをすることになるのだろう。
そんな予想をして、6人は馬車の中から外をチラチラと見て、今か今かと王城に着くのを待ち続ける。
そんな6人に、伯爵は苦笑いをして隣の護衛2人を見た。
護衛2人は、どうして王様と会うというのにこんなにも緊張感がないのかわからないと言うように眉をひそめていた。
王様の前で失礼なことをしたり言ったりしたら、運が悪ければ牢屋にぶち込まれて死刑だ。
それなのに、この6人には全く緊張感がない上に、自分たちが勇者だという自覚すらもない。
シンフォニア王国の人間にとっては、それがとても信じられなかった。
物語の勇者たちはみな堂々としていて凛々しく、強く、そして何事も丁寧でみんなの理想だ。
だが、目の前にいる6人の勇者たちはそれがない。
完全にと言っていいほど、庶民だ。
それがどうにも、護衛2人は気に食わなかった。
勇者はもっと堂々と、誰からも憧れるような人でなければならないと思っていたのに。
暇72は食事を食べた後すぐに寝そうになっていたし。
こさめは好き嫌いが多いし。
いるまはいちばん冷静そうだが色々とテキトーな節があるし。
LANは頼りにならないし。
すちは常にポヤポヤして寝そうになっているし。
みことは言うまでもない。
そんなだらしない姿を、彼らは認められなかった。
だが、彼らの話を聞く限り、彼が勇者であることは間違いないし、何よりもあの圧倒的な力がある。
王様が6人を勇者だと認めるのも、時間の問題だった。
伯「もうすぐで着くぞ。気を引き締めなさい」
他「「「「「「りょーかい!」」」」」」
ガタンガタンと馬車が揺れて、6人は咄嗟にお互いにしがみついてバランスを保つ。
当たり前のようにスキンシップを行う彼らは、仲が良いと見受けられる。
それは良いが、、、あまりお互いに不信感を持たずに行動するのも良くない。
このうちの誰かが的に寝返った時に、あっさりと謀られてしまうからだ。
だから、護衛は護衛同士、騎士は騎士同士でお互いに信用していながらも完全に信頼してはならぬと言って訓練を受けさせられる。
そういう意味でも、6人は護衛たちに不安感を持たせた。
馬車を下りると、目の前にレッドカーペットがあり、大きな灰色のお城が聳え立っていた。
6人はその大きさに目を丸くし、そして、王様のお城だから当たり前か、と勝手に納得する。
それから、伯爵に連れられて6人は城の中に入った。
長い廊下を歩いていると、こさめの足先に何かがコツンとぶつかった。
何だろうとこさめが見下ろすと、それもまたこさめを見返した。
それは、人の生首だったのだ。
こ「へっ、、、?」
それを認識したが最後、こさめは全力で叫び、その生首を蹴って猛ダッシュで今来たばかりの道を戻る。
蹴り上げられた生首がいるまと暇72の頭上に迫り、いるまと暇72もまたそれが生首であることを認めて頬を引き攣らせる。
LAN、すち、みこともそれを見て、げっ、と顔を顰めた。
こさめは猛ダッシュで馬車まで駆け戻ると、くるりと後ろを見て生首が追ってきていないことを確認する。
日本でたくさんホラゲをしてきた彼にとって、そしてそれらが苦手な彼にとって、生首にはとてつもないトラウマがあるのだ。
「あのぉ、、、大丈夫ですか?」
馬の背中を撫でてあげていた御者が、真っ青な顔をしているこさめに話しかける。
こさめが事情を話すと、御者は何も怯えずにただ「ああ、それは王様ですよ」と答えた。
ぽかんとするこさめ。
そんなこさめに向かって、御者は説明してくれた。
このシンフォニア王国の王様の祖先は、魔族とのハーフらしい。
だから、腕を切り落とされても足を切り落とされても首を切られても、死ぬことはないのだとか。
魔族というものがそもそも、生きる核である心臓を貫かなければ死なないため、そのハーフである王様もまた心臓を貫かれない限りは死なないのだとか。
そんな王様は12年前の魔物の奇襲であっけなく首を切り落とされ、今の姿になったのだとか。
確かに言われてみれば、豪奢な服を着せたマネキンにあの頭を付けたら王様に見えなくもない。
冠はしてなかったけど。
こ「この国の王様、怖すぎません?」
「まあ、誰だって最初は驚きますよ」
御者に言われてから、こさめはあることに気がついた。
シンフォニア王国の王様を、こさめが蹴り飛ばしてしまったことに。
そんなことを知らない5人は、突然現れた生首に大わらわだった。
LANがそのな首を拾ったかと思えば「うわっ、ホントに生きてるじゃん。ほんとに生首だわ」とか言ってしまったのが引き金だった。
ちょっとの悪戯でほぼ投げるようにしているまに生首を渡したLANは、そのまま近くの柱に隠れる。
生首を投げて寄越されたいるまは、呪われるかもしれないとその生首を落とせなかった。
なぜそう考えるのかと言うと、彼が幼い頃に家族でリビングに集まって怖い映画を見るという決まりがあったからだ。
そこで、出てきた生首を落としてしまって呪われるような人が出てきた。(捏造です。By作者)
それをいるまは、未だに覚えていたのだった。
い「うわぁ待って無理かも!なつ!!」
暇「おいこっちに寄越すなよ!!すち!!」
す「ああああああ!!!!やめてええええええ!!」
み「こっちに渡さんといて!!俺も無理だから!!」
ら「あーあ、頑張れぇ!」
み「くっ、、、らんらん!!」
ら「そこ普通俺に寄越す!?!?」
LANが隠れていた柱からいちばん遠いところにいたみことが、生首を投げる。
そして、綺麗にLANの手の中に納まったのだった。
LANはびっくりして、思わず生首を落としてしまう。
そんな5人の様子を見て、伯爵は真っ青だった。
その護衛もまた、真っ青だった。
こんなことをして、そしてこんなことを言って、許されると思えなかったからだ。
彼らはこの生首が王様だということを知っていたが、それ以上に5人がしていることが罰当たりすぎて何も言えなくなってしまっていたのだった。
首「これ、やめんか!!」
他「「「「「喋ったああああああ!!!!」」」」」
首「喋るに決まっておろう!?余はこのシンフォニア王国の王であるぞ!?」
他「「「「「嘘だろおおおおおおお!!!!」」」」」
5人の絶叫が、城の中に響き渡った。