コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「柚葉、悪かった。会社を立ち上げてすぐに、沙也加にお父さんを紹介してもらった。その時はただの友達だったのに、少し前に交際を申し込まれて。何度断っても無理だった。それで、お前に……」
「そっか……うん、わかった。沙也加さんに早く諦めて幸せになってもらいたいんだよね。それが、沙也加さんに対する樹の優しさ……」
「そんな良いもんじゃない。確かに、仲間としては沙也加に幸せになってもらいたい。だけど、正直、取引先として、もし今の関係を切られたらって……。そんな不安が頭をよぎったのも確かだ」
「当然だよ。仕事は遊びじゃないし。大事な取引先から手を引かれたらどうなるかくらい、私でもわかるよ」
「本当に悪かった。でも、今は、もしそうなっても仕方ないと思ってる。俺のせいだし、その分、またがむしゃらに仕事を頑張ればいいだけだ」
樹の無理してる顔がせつない。
「私、沙也加さんのお父さんとの関係が上手くいくことを願ってる。もし、樹と柊君の仕事が大変なことになったら、せっかく今まで頑張ってきた苦労が……。どうしたらいいんだろう。何か役に立てる方法はないのかな?」
本気で心配でたまらなくなった。
樹のことはもちろんだけど、柊君には仕事が必要だと思うから。
必死に頑張ってきた柊君の姿を、私はずっと側で見てきた。仕事が大好きで、日本一のIT企業にするんだって、いつも夢を語ってくれてた柊君を。
もしも倒産なんてことになったら、いくら女の子がたくさん周りにいても、柊君はきっとダメになると思う。
「柚葉は心配しなくていい。俺がお前を巻き込んだんだ。俺が考える」
「沙也加さんが簡単に諦めてくれなかったら……」
「だとしても、俺はお前以外考えられない」
そんなこと言わないで……
柊君の心配をしてた感情が、今また樹を思う感情に入れ替わった。
この気持ちは本当にどういう感情なのか?
「柚葉、明日から俺と暮らそう。それとも明後日がいいか?」
「え!!」
あまりの驚きに大声を出してしまった。
上品な空間には似合わない声に、周りの人が一斉にこっちを見た。
「さっきのはお芝居でしょ? 一緒に住んでて結婚するとかって」
「俺が考えた結果だ。まずは沙也加を諦めさせたい。だから柚葉と一緒にいないと芝居だったってバレる。あいつを諦めさせるのはそれしかない」
「理解はできるけど、実際問題……」
「柚葉が役に立てる方法、それは俺と同居すること。もちろん、お前に嫌な思いはさせないように気をつける」
それはどういう意味?
男性と一緒に住むなんて、今まで1度もなかったのに、しかもその相手が彼氏でもない樹だなんて……
「ただのルームシェアだと思えばいい。別に難しい話をしてるわけじゃないから」