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「ルームシェアとか言われても……。やっぱり、私、男性と一緒に暮らすなんて初めてだし、緊張しちゃうから。それに、今の私のマンションのこともあるし、急には無理だよ」
「柚葉のマンションの家賃も俺が払う。そんなことは心配するな」
「そんな……」
「俺、さっき、すごく嬉しかった。たとえ芝居でも、柚葉が俺と結婚するって言ってくれて。お前の気持ちがまだ定まらないのはわかってる。急がせるつもりもない。ただ……今は俺の側にいてくれ」
樹は、目の前のグラスに注がれたお水を一気に飲み干した。
「とりあえず出よう」
そう言って、私の手を掴んで、樹はラウンジを出て駐車場に向かった。
車の助手席、まだ動揺してる私。まだまだ頭の中が整理できていない。
「柚葉。明日の夜、仕事が終わったら迎えにいく。しばらくの荷物だけでいいからまとめておいてくれ」
「あっ、でも私……」
「頼む。必ず、迎えに行くから」
樹……
あなたに協力したい。
つらくて悲しかった時、支えてもらったから。
だけど、私は、樹への答えをずっと出せないままでいる。
そんな落ち着かない精神状態で、一緒に暮らして大丈夫なの?
嫌な思いはさせない……って、きっと変なことはしないっていう意味だよね。樹さんは、私を大事にしようとしてくれてる。だったら、本当にシェアハウスするって感じでいいのかな……
しばらく協力して、そのうち沙也加さんが樹を諦めてくれたら……。そしたら、私はまた自分のマンションに戻ればいいんだよね。
それまでの同居生活、そう思えばきっと問題ない……
男女の関係にならない、ピュアな同居――
それが樹への恩返しになるなら……
役に立てるなら……
そう自分を納得させて、私は何とか気持ちを固めることができた。
「わかった、協力する。でも、沙也加さんが諦めてくれたら、私は……」
「それ以上言わなくていい。明日、連絡する」
私のマンションの前で車を止め、
「また明日」
お互いぎこちなく挨拶を交わして、私達は別れた。