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俺はその雫を、世界で一番壊れやすい宝物に触れるような手つきで、指先で優しく拭った。
「泣いてない、から……っ」と繰り返しながら、必死に視線を泳がせる彼女。
通常運転の強がりだが、それが今はたまらなく愛おしく、同時に胸を締め付ける。
「いや、もっと早く気づくべきだったな。君を一人にして、こんな思いをさせてしまった。俺の落ち度だ」
「……な、なんで貴方が謝るのよ……っ、バカ……」
リリアーヌは毒気を抜かれたようにそう呟くと
あろうことか、俺の腕に自分からぎゅっと、しがみつくように細い腕を絡めてきた。
予想外の超至近距離
不可抗力だ、不可抗力だが
腕に伝わるリリアーヌの胸の柔らかさと、トクトクと刻まれる彼女の鼓動に、俺の理性のメインサーバーはショート寸前だ。
(だあ~~っもう、どうしてそんなに可愛いんだよっ!!反則だろ!!)
「……でも……っ、あり、がと」
「……っ!!」
脳天を直撃する、最大級のクリティカルダメージを伴った「ありがと」!!
しかも、顔を真っ赤にして、消え入りそうな震える声で!!
ああもう、この子は本当にどうしてこんなに可愛いんだろう。
尊すぎて、マジで肺の酸素が足りない。
呼吸困難になりそうだ。
だけど、一人の男として、一人のオタクとして言わせてくれ。
俺、多分何もできてないぞ。
本来なら、推しが「ブス」なんて侮辱される前に、音速を超えるスピードで颯爽と現れ
彼女の腰をスマートに引き寄せ、「俺の瞳には彼女こそが世界の真理(美)として映っているが?」くらいのかっこいいヒーロー台詞を吐いて、完璧に助けるところを見せたかった……っ!
なのに、まともにかっこいいセリフも言えなかったし
結局、俺のせいで推しを泣かせてしまっている。
不甲斐なさすぎる……。
まあ……でも。
リリアーヌからの、心からの「ありがと」が聞けたなら、今日はいいか。
いや、むしろお釣りがくる。
……俺がリリアーヌを幸せにすると決めたんだ。
今度からは、何があっても、どんな瑣末な公務も放り出して、しっかり彼女の隣で守り抜こう。
一瞬でも遅れをとったら、いつどこでこの理不尽な世界がリリアーヌを処刑ENDに引きずり込むかわかったもんじゃないからな……。
「当然だ。君は僕の大切な婚約者なんだから。……次からは、ずっとリリアーヌのそばに居るからな」
「……!」
(そして何より、この世界で唯一無二の、俺の最推しヒロインだからな!!)
その後、俺の腕を離そうとしない彼女を連れて
用意していたモンブランを食べる頃には、リリアーヌも少しずつ落ち着きを取り戻し
いつもの「ツンデレで可愛い婚約者」に戻っていた。
だが、俺の心は決まっている。
さっきの令嬢たち……。
またリリアーヌに何かしてくるようなら、次は容赦しない。
そのときは徹底的に実家の財務状況を洗って、何かあれば速攻で効率的な制裁を加えてやる。
リリアーヌを泣かせた代償は、高くつくんだからな。