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強化実験が始まる。
さっそく、
安定層が微細に揺れ始める。
沈黙が管理され、
余白が設計され、
花子のような利用者が
違和感を覚え始める。
そのとき、
本部は考える。
「ならば、
意味を最大化する層を
拡張すればいい」
溺愛プランを、
モデル化する。
再現可能にする。
村田の振る舞いを分解し、
プロトコルに落とす。
だが、
問題が一つあった。
村田は再現不能だった。
彼は、
依存させない。
甘やかすが、
縛らない。
“選ばれている感覚”を与えるが、
“唯一”にはしない。
だから崩れない。
だから壊れない。
強化実験の最初の副作用は、
ここで出た。
村田の模倣スタッフが、
依頼者に依存され始める。
「もっと会いたい」
「あなたしかいない」
契約延長。
特別料金。
囲い込み。
数字は伸びる。
だが、
精神負荷も跳ね上がる。
安定層は微細に崩れ、
溺愛層は過剰に燃える。
両極が揺れる。
月影は理解する。
ターくんは、
設計の成果ではない。
例外だ。
ある会議で、
佐伯が言う。
「彼の振る舞いを、
標準化できないか」
月影は、
一拍置いて答える。
「無理です」
珍しく、即答だった。
なぜなら。
村田は、
誰も“選んでいない”。
選ばれる演出をしながら、
実際には全員を平等に扱う。
そこに執着がない。
仮想日本で、
ハーレムを作れる男。
しかも平成生まれ。
頭も尻も軽いことで知られていた昭和生まれの小山内“金髪豚”総理でさえ
「それならぜひとも教えて欲しいくらい🤤」と
思わず漏らしたほど。
……あんたには到底無理。
だが会社は、
理解していない。
彼の強さは、
愛ではない。
空白を恐れる者の、
徹底した運動量だ。
*
崩れ始める安定層
強化実験が進む。
更新済みスタッフは、 微妙に“揃う”。
同じテンポ。 同じ優しさ。 同じ別れ方。
契約者たちは言い始める。
「最近、みんな似てない?」
「誰に頼んでも大して変わらないって、これじゃ……」
その横で、 更新を拒否した村田だけが ばらついている。
料理の味が毎回少し違う。 LINEの間隔が読めない。 笑い方も一定じゃない。
それが――
妙に安心する。
安定層は、 均一化によって崩れ始める。