備品庫へ行くと、井上はまだ来ていなかった。
とりあえず恵子は頼まれていたセロテープの替えを棚から取り出す。
そして緊張しながら井上を待った。
数分後、ノックの音が響いて誰かが入って来た。
「恵子さん?」
「井上君?」
「あ、いた。良かった」
井上は棚からひょこっと顔を出すと、傍に来て恵子を強く抱き締めた。
「い、井上君っ?」
驚いた恵子が顔を上げると、井上はすぐに唇を奪う。
「んっ……」
井上はしばらく情熱的なキスを続けた後、漸く身体を離して恵子に言った。
「さっきコンビニの前で逃げましたね?」
恵子はドキッとする。
「に、逃げてないわ。外のコンビニに行きたかっただけよ」
「嘘です。俺にはコソコソ逃げたように見えました。なんで逃げるんですか?」
井上は罰を与えるように、再び恵子の唇を奪う。
「んっっ」
つい色っぽい声が恵子の口から漏れた。その声が起爆剤となり更に井上を煽る。
静かな備品庫の中には、チュッ クチュッ という艶めかしい音が響き渡る。
そして井上は漸く唇を離してから恵子に言った。
「もう逃げないで! 恵子は俺の彼女なんだから」
「…………」
初めて呼び捨てにされた恵子は、心臓がドキドキする。
すると井上はまた恵子の唇を奪った。
そして井上の手は恵子の身体をさまよい始め、やがて服の中へと侵入していく。
井上の逞しい手は恵子のふくよかな膨らみを捉えると、硬くなった先端に刺激を与え始めた。
井上は巧みに愛撫を続けながら、ブラジャーを上にずらし直に刺激を加える。
そして次の瞬間井上の顔が近付いたかと思うと、井上は恵子の蕾を口に含んだ。
「あんっ……ち、ちょっと井上君……あんっ…..」
井上の舌が恵子を執拗に攻め始めたので、恵子の抗議の声は喘ぎ声へと変わった。
「あんっ、井上君……こんな所でダメよっ…誰か来ちゃうわ……」
恵子は口では拒否していたが、心と身体は井上を求めていた。
キスだけで終わらせるつもりだった井上は、恵子の色っぽい喘ぎ声を聞きもう止められなくなっていた。
井上は今すぐにでも恵子が欲しかった。
「頼むからここで……させて……」
男の色気に満ちた目線でそう囁かれたら、応じない女性などいないのではないだろうか?
それほど今の井上はとても魅力的だった。
有能で将来を期待されている若いオスが恵子を求めているのだ。それだけで恵子は充分だった。
恵子は一度井上から離れると、入口まで行きドアの鍵を閉めた。
そして、備品庫の一番奥へ井上を誘導する。
突き当たりにある机につかまりながら、恵子はストッキングと下着を素早く脱いだ。
そして机の上に上がると、両足を大きく開いて誘うように言った。
「井上君、来て……」
恵子の淫らな誘いを見た井上は、すぐベルトを緩めるとデニムを膝まで下ろす。
そして恵子の足の間に割って入った。
そしてすぐに二人は繋がる。
「はぁっっ….あぁんっ……」
我慢出来ずに声が出てしまった恵子は、慌てて自分の手で口を塞ごうとした。
しかしそれより先に井上がその声をキスで封じ込める。
井上が腰を振るたび、卑猥な水音が備品庫内に響いた。
無機質な室内に反比例するかのようなその音を聞いて、更に二人は燃え上がる。
恵子は今までに感じた事がないほどの大きな快感を得ていた。
井上の情熱と若さが、恵子を全く知らない世界へ連れて行ってくれる。
二人の感度が最高潮に達した時、ふたりはギュッと抱き合い一つに溶け合った。
恵子の中で井上がビクビクッと跳ねた瞬間、二人は唇を重ねる。
「恵子……愛しているよ」
「井上君……私も愛してるわ」
二人は互いの瞳を見つめ合った後、再びギュッと強く抱き合った。
その後二人が身だしなみを整えた時、恵子はハッとして井上に聞いた。
「井上君! 今って何も着けないでした?」
恵子はかなり焦っている。
「大丈夫ですよ。何かあっても、俺、ちゃんと責任取りますから」
井上は穏やかに笑う。
「責任って……妊娠したらって事?」
「はい。俺、父ちゃんになる覚悟は出来てますんで」
井上は誠実な瞳で恵子を見つめる。
それから意を決して言った。
「恵子! 俺と結婚して下さいっ! お願いしますっ!」
井上は突然ひざまずき右手を差し出す。
「ちょ、ちょっと井上君、気が早くない? だって私達まだ付き合い始めたばかりよ?」
「交際期間なんて関係ないっすよ。俺は今すぐあなたと結婚したいんです。あなたとずっと一緒にいたいんっす」
嘘のない井上の眼差しを見て、恵子の心が揺れた。
そして恵子はこんな事を思う。
(昔誰かが言ってたわ。結婚は勢いだって。フフッ、時には流れに乗ってみるのもいいかもしれないわね)
そこで恵子は決心する。
「いいわ、結婚しましょう」
「マジっすか? 本当に?」
「その前に一つだけ聞いてもいい?」
「なんっすか?」
「この前私達が行ったホテルには、何度も行った事があるって井上君は言ってたけど、一体誰と行ったの?」
恵子からの意外な質問に、井上は「なんだ」という顔をする。
そして笑顔で言った。
「ああ、あれはうちの両親と妹達っす。家族が東京へ来る時はいつもあのホテルへ泊まるんですよ」
井上の答えを聞いた恵子は、みるみる顔が真っ赤になる。
「そうだったんだ」
「あれ? もしかして何か勘違いしてました?」
「あ? いえ、そういう訳じゃ……」
真っ赤になっている恵子を嬉しそうに見つめた後、今度は真面目な顔で言った。
「俺は素敵なレストランやホテルには、あなたとしか行きませんから。これから先もずっと」
すると井上は突然恵子を抱き上げて、クルクルと回り始めた。
「ち、ちょっと井上君ったら、目が回るってば~、ちょっとぉ~」
しかし井上はやめる気配がない。
恵子は井上に首に必死にしがみつきながらキャッキャと声を上げる。
楽しそうにはしゃぐ二人の間には、互いを想い合う愛が溢れていた。
それから四か月後。
「新郎・井上賢人、あなたはここにいる中森恵子を、病める時も健やかなる時も富める時も貧しき時も妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「誓います」
「新婦・中森恵子、あなたはここにいる井上賢人を、病める時も健やかなる時も富める時も貧しき時も夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「誓います」
そして二人は指輪の交換をした。
「では、新郎新婦、誓いのキスを」
井上は恵子と向かい合うと、感無量といった様子で恵子を見つめる。
ウエディングドレスに身を包んだ恵子はとても可愛らしく、どう見ても井上より年下に見える。
井上と付き合うようになった恵子は、どんどん美しくなっていた。
一方、グレーのタキシードに身を包んだ井上は、男らしい魅力に溢れていた。
井上は恵子と付き合い始めてから、大人の男として見違えるように成長した。
以前にも増して仕事に打ち込むようになった井上は、先日歴代最年少で主任に昇格した。
今日二人は交際五ヶ月目のスピード婚をした。
スピード婚の理由は、恵子のお腹に新しい命が芽生えたからだ。
あの日俺は見たんだ、あなたの優しさを。
だから俺は心に決めた。
あなたを愛する事を……
俺はあの日あなたを見た瞬間から、ずっとこうなりたいと思っていたのかもしれない。
そしてその願いは今日叶った。
漸く掴んだ幸せを、俺は絶対に手放したりはしない。
この先あなたと共に生きていけるなら、俺はもう他には何もいらない。
ただ傍にあなたがいてくれるだけでいい。
そしてもう一つ。あなたの中に宿る二人の愛の結晶を、俺は一生守ると誓うよ。
ウエディングベールをゆっくりめくった井上は、真剣な眼差しで恵子を見つめた。
恵子はその視線を受け、少し恥じらうようにはにかむ。
そして二人は誓いのキスをする。
二人が唇を重ねた瞬間、参列者達からは大きな拍手とお祝いの言葉が一斉に投げかけられた。
<了>
これですべて完結です。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。瑠璃マリコ
コメント
45件
惚れたら即ロックオン♥️情熱的に攻めるところも、付き合って直ぐプロポーズしちゃうところも....さすが深山二世‼️😎👍️サイコー💕💕 恵子さん、井上くん、 ご結婚とご懐妊、おめでとうございます⛪️🤵👰👶♥️ 末永くお幸せに🍀✨ 瑠璃マリ先生、 完結おめでとうございます💐🎉✨
もうさ、順番なんて 関係ないね😎(泣かないでの相棒出て来たw) 早かれ遅かれこのカップルは結婚するんだもん♡ 幸せになってね💕💕 素敵なお話をありがとうございました!
㊗️完結〜! 井上くんいいなぁ、恵子ちゃんしか見えてない感じ最高🤭 テク持ちの肉食男子なんて 恵子ちゃんԅ(¯﹃¯ԅ)ウラヤマ🤣🤣🤣