TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する





床に横たわったままでスマホを見てみた。


15:30だ。


…カチコチと時計が時を刻む音が聞こえるほど、部屋は静まり返っている。


…頭が痛い…ズキズキする…。


早速、お酒を飲まないという誓いを破ってしまった。


あれから、水を飲んで酔いを軽く覚ました後に顔を洗って、…それで、だるすぎてずっとぼーっとしていたんだった。


かなり荒れてしまった、気がする。

それなりに大きな声も出した感じがするし、泣いたような涙の跡が頬にかすかに残っていた。ほんのちょっとは覚えている。が、正直なところスミレの遺影の話を軽くした後に泣いたと言うことを、いや、それくらいしか記憶がない。

それはそうと、悪酔いした私はだる絡みのオンパレードだっただろうと思う。…と言うのも、私は自他共に認める絡み酒をしてしまうようなやつなのだ。

絡み酒はどんなやつかと言うと、酔っ払うとものすごく話すやつだ。しかも実りあるような話じゃなくガチで意味ない身の丈話をしてしまう。…しかも、大抵の場合一方的に話すどうでもいいような話の内容を、私は覚えていないことが多いのだ…。


…これはあまりにもクズすぎる!


絶っっっ対にドン引き嫌われ二段コンボだ。やっちまった…。カワリバはもう電話に出てくれなさそうだ………。


酒など飲まなければよかったっ!


プルルルルプルルルルルル!!



!!??


かわ、りば?そんな、許してくれたのか!?



じゃないっ!枕元の私のスマホが震えている。スマホとガラケーの着信音すらもわからなくなってしまったのか…?


いや!それよりも誰だっ!?


携帯の表示をばっと見る。


……これは…。


スミレのお母さん…!


意を決して、白波杏と表示されている画面をタップした。


『………はい、赤橋凪です』


ちょーっと酒焼けしてる声が出た。おまけに鼻声だし、酷い声。


「あ、もしもし?凪ちゃん、久しぶり〜体調とか大丈夫?」

懐かしい声だ…!この声を聞くと高校時代、スミレの家に遊びに行っていたときのことを思い出す。


『久しぶりです…!変わらず元気です!』


『っふふ、それはよかったわぁ〜』

「……えへへ…、それで、どうしたんですか?何かご用だったりしますか…?」


『それがね…、ご用ってもんでもないの…。家からちょっとあなたに見せたいものが出てきたのよ。』


「え、な、何が出たんですか…?」

『スミレのものだろうと思うんだけどね、写真がたくさん出てきたの』


「…え!?」


『私もそんな感じで、びっくりしちゃって…もう、あんなに写真が嫌いだったあの子がまともに写真に写ってる上に…』


「……(そんなことが…)」


『どうも、画角的に自分で撮ったものなの…

多分、自撮りってやつだろうって思うんだけどね…。』

「……(そんなことが起こるって…!)」


「…お母様って、このあと予定はありますか…?」


『ないわ!全く!』


「この後お家に伺ってしまっても…?」

『おっけーよ!私も、実際に見てもらいたいなってお家に誘おうと思ってたのよ、よかったら、来てくれるかしら…?』


「…!もちろんです!」


16:20か…。


道路をてくてくと歩く。もしかして17時を過ぎてしまっているのだろうかと思うほどに空が暗く、風もやけに冷たいので腕時計を見てみたが、まだ16時だった。ここ最近はどんどんと寒くなってきている。今日は厚めのカーディガンを着て外に出たけれども、それでは足りなかった。服のセレクトをミスったらしい。さっき買ってポッケに入れた缶コーヒーもすっかりと冷め切ってしまった。このままポッケに入れていても荷物になってしまうから、と缶コーヒーを開けて飲む。はぁー冷えてる。というかぬるい。まあ、美味しいは美味しいのだが、ぬるいせいで体温が少し奪われてしまった気がした。


ちょうどコーヒーを飲み切るとき、スミレの家に着いた。

…最後に来た3年前より茶ばんだネームプレート、一方、でこぼこで歩きづらかったタイルは新しく張り替えられていた。3年で変わるもんだなぁと、スミレの家の前でぼーっと考えた。と、いけないいけない、ピンポンしなくちゃ。


ピーンポーン…

チャイムの音は変わっていなかった。とても懐かしい…。


『はーい』


「こんにちは〜」


『凪ちゃんいらっしゃーい鍵開けに行くわね!』


「ありがとうございます!」


うおーこの感じ!本っ当に久しぶりだ!お母さんが開けてくれるこの感じ、一人暮らしの友達の家に遊びに行くのとは違うノスタルジックを感じると共に、玄関前でお母様を待った。


ガチャ…

『凪ちゃん!久しぶり〜!』


「…!お久しぶりです!」


『ほんと久しぶりね〜!…んー…やっぱり外寒いわね!冷えるだろうなと思ってお茶淹れてて正解だったわぁ…さ、早く上がっちゃって!』


「本当にありがとうございます…!!」


ガチャリと玄関のドアが開いた。温かい空気が冷えた私の体を溶かしていくように感じる。

段ボールを開けた時に、本当に微かにしたスミレのつけていた香水の香りがする。

玄関で靴を脱ぎ、きちんと並び替えた後、少し長い廊下を進んで居間に着いた。部屋のレイアウトはさほど変わっていないが、壁紙が新しくなったかな?


『それじゃあ、自由にくつろいでいてね。古臭くてごめんだけど、お煎餅食べてて!んじゃあお茶持ってくるわ!』


「はぁーい。」


お母様…。元気そう…?いや、取り繕っているのかな…?

どちらにせよ、笑顔でこうして会えて、よかったと思う。


改めて部屋を見回してみると、部屋に小物が多くなっているということに気がついた。まあ、3年もたってしまっているから、そんなものだろうか……。小物というのも、スミレが収集していた雑貨屋のものが大半を占めている。壁掛けのおしゃれな写真、ピンクの花瓶、小さなガラス細工…。そこかしこにスミレの痕跡がある。死んでしまってから飾ったのか、それともその前なのか……ただ、お母様がスミレのことを大切に思っているということは部屋を軽く見渡しただけでもわかった。

そして私は「やあ、」と言う

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

38

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚