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豪は少し考えた後、勇気を出して本心と言える事をボソリと告げた。
「……いつか俺が君の彼になって…………抱けたら……嬉しい」
これって告白だな、と思いつつも、奈美は何も言ってこない。
(いきなり抱けたら、と言って……奈美は引いたか……?)
彼女の無反応が気になるが、夜も大分更けてきたところで、二人はベッドに身体を預け、眠りについた。
***
翌日。
豪は、奈美と連絡先の交換をしたいと申し出た。
「いいですよ。メッセージアプリの方で交換しますか?」
「そうしようか」
スマホを操作しながら、ふと思った事を彼は聞いてみる。
答えてくれるかどうか、わからないが。
「そういえば、奈美って名前は、本名?」
「はい。下の名前です。豪さんは?」
「俺も下の名前」
奈美のメッセージアプリのIDを登録し、彼女といつでも連絡が取れると思うと、豪の表情から、笑みが湧き上がりそうになった。
陽が高く昇ってきた頃、ホテルをチェックアウトして、二人で駅に向かう。
さりげなさを装い、彼は奈美の手を取り、繋いだ。
軽く握ると彼女も握り返してくれて、ニヤけてしまうのは、かなり変なのかもしれない。
立川駅に到着し、改札に入ると、豪と奈美は手を繋いだまま向かい合う。
「じゃ、また。今度はスマホから連絡する」
名残惜しい気持ちに蓋を被せ、豪は、やっとの思いで小さな手を離した。
「はい。ありがとうございました。帰り、気を付けて下さいね」
奈美に笑顔を向けられ、彼も微笑み返す。
互いに軽く手を振った後、それぞれ乗車するホームへ向かっていった。