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CASEモモ
四郎がリビングから出て行ってしまった。
私は、四郎の後を追うようにリビングを出た。
「四郎?四郎?どこ?」
三郎の部屋から明かりが溢れていた。
ペタペタ…。
「四郎…?」
部屋を覗くと、四郎が1枚の写真を見ていた。
何の写真を見てるんだろ…。
「何してるの?」
「っ!?お前か。」
四郎はポケットに写真をしまった。
「私の気配に気付かないで、何を見てたの?」
「ちょっとな。あー、目薬の時間か…。部屋に行くぞ。」
「うん。」
私と四郎は部屋を出て、私の部屋に向かった。
部屋に着くと四郎は私をベットに座らせ、手慣れた手付きで目薬をさした。
そして、日焼け止めを丁寧に体に塗ってくれた。
「ありがとう、四郎。」
「あぁ。」
「私が聞いちゃいけないものが写ってたの?」
「何の話だ?」
「さっき、写真を隠したから。」
私がそう言うと、四郎は渋々口を開けた。
「…、三郎の部屋にあったのはボスの息子の写真だ。」
「息子…?」
「あぁ。三郎が何を調べたくてここを出て行ったのか、気になっただけだ。」
嘘。
四郎は本心を言ってない。
写真や三郎の事は本当だろうけど、他にも理由がある筈。
私が聞いちゃいけない事なのだろう。
前の四郎だったら、何も言わなかった。
だけど、今は少しだけだけど話してくれるようになった。
全部は言わなくて良いから…。
私の事を使って欲しい。
「四郎。」
「何だ。」
「私の事も使って。」
そう言うと、四郎は私を寝かせ布団を掛けた。
「寝ろ。」
「四郎!!」
「俺も辰巳さんみたいにお前の力を使えって事か。」
四郎の言葉を聞いた私は頷いた。
「私、四郎になら力を使いたいし役に立ちたい…。四郎も力を使えた方が…。」
「俺は、誰かを辰巳さんのように大切に思った事がない。この先、思えるかも分からない。メンバーの事は信頼している。お前の事も少しは信頼して来てるつもりだ。」
ギュュゥ…。
四郎がこんな事を言ってくれるとは思わなかった。
胸が締め付けられる。
私の事も信頼して来てくれてるの?
「お前の力を使うのは考えとく。」
私は四郎の言葉を聞いた後、勢いよく顔を上げた。
「分かった!!!」
「お、おう…。いきなり大きな声を出すなよ。」
「だって、四郎が嬉しい事言うから!!」
「分かった、分かった。早く寝ろ。」
「うん。」
考えてくれるって。
私の力を使う事を考えてくれるって。
四郎…、大好き。
どうして、四郎の事を大好きになったんだろう。
会って1ヶ月しか経ってないのに…。
私、四郎の事が好きでたまらない。
瞼が重くなり、私は瞳を閉じた。
CASE 四郎
モモが寝た事を確認し、部屋を出た。
俺はモモの力を使う気は、今の所はない。
辰巳さんが美雨を大事に思うように、俺もモモをそんな風に思えるのか分からなかった。
今まで、誰かにそんな感情を抱いた事がなかった。
俺にとっては、未知な感情だ。
確かに、最初の頃よりかはモモの事を考えるようになった。
そんな事を考えていると、二郎に声を掛けられた。
「モモちゃんは寝た?」
部屋を出ると、二郎が立っていた。
「あぁ。」
「その封筒は?」
俺は二郎に封筒を渡し、中身を見るように指示する。
二郎は封筒を開き、中に入っている写真と書類を見て驚いていた。
「これ…、どうしたの?」
「三郎の部屋にあった。」
「そっか。」
「二郎、お前は知っていたのか。」
二郎の反応からして、ボスに息子がいた事は分かっている感じだった。
「知ってたよ、ボスに息子がいて殺された事もね。一郎も知ってる。」
「は、はぁ?」
一郎も知っていた?
「僕と一郎は、組の仕事もしていたしね。椿が元兵頭会の組員だった事、椿が息子の拓也さんが殺された事もね。ボスから口止めされていたから、四郎達には言わなかった。」
「お前等は、どこまで知ってんだ。」
「ボスと椿は宿敵で、ボスは椿を殺したがってる。その為に僕達は集められた。それぐらいかな。」
二郎はそう言って、頬を指で掻いた。
二郎がその仕草をする時は嘘を付いてる時だ。
「二郎、他にも俺に隠してる事があるだろ。」
「ないよ。」
「そうかよ。」
「四郎も少しは寝た方が良いよ。」
「あぁ。」
今は何を聞いても答えないつもりか。
これ以上は、二郎から聞き出せそうにねぇか…。
「部屋に戻るわ。」
「ゆっくり休んで。」
「あぁ。」
俺はそう言って、部屋に戻った。
「三郎に連絡するか。」
スマホを操作し、三郎に電話を掛けた。
三郎はワンコール目で通話に出た。 「もしもし?どうかした?」
「三郎、少し話せるか。」
「うん、大丈夫だよ。」
「そうか、お前の部屋にあった封筒を見た。ボスに息子がいる事も知った。」
俺がそう言うと、三郎は少し黙った後、言葉を放った。
「そっか、四郎なら俺の部屋に行くと思って残しておいたんだ。ボスが何の目的で僕達を集めたのか、椿はどうして兵頭会を抜けたのか。後は、アルビノの女の事も調べようと思ってね。」
「一郎と二郎は、この事を知っていた。俺達には黙っていたようだ。」 「え?二郎と一郎が?そっか、アイツ等…。」
三郎はそう言って、短い溜め息を吐いた。 「ボスに口止めされてるんだろうね。ボスはよく、あの2人に組の仕事もさせていたし。四郎もこの事を調べるつもり?」
「あぁ、知らないといけない気がするからな。」
「ハハッ、四郎の勘は当たるからなぁ…。分かった、俺が姐さんの所に行って聞いてくる。」
姐さんと言うのは、情報屋の女だ。
俺もたまにターゲットの事を聞く為に、利用する事がある。
だが、かなりの大金を払わないとあの女は口を割らない。
「四郎、怪我はしなかった?」
「怪我?あー、してねぇ。一郎と六郎の容態は。」
「大丈夫。𣜿葉って男とJewelry Pupilの子供が来て、2人の治療をしてたよ。」
「そうか。」
𣜿葉も知っている人物と、三郎は一緒にいるのか…。
俺に連絡を入れて来た喜助は何者なんだ…。
「何か分かったら連絡するね。」
「あぁ、頼んだ。」
「了解。」
三郎の言葉を聞いた後、通話を終わらせた。
パタンッ。
四郎が部屋に入ったのを見届けた二郎は、アジトを出た。
スマホを操作し、兵頭雪哉に電話を掛ける。
兵頭会本家の地下ー
「ゔっ、ゔぅ…。」
男の呻き声と、周りに飛び散った赤い血が嫌な雰囲気を漂わせる。
「情け無いな、九龍彰宏。」
兵頭雪哉の手にはゴルフクラブが握られていた。
そして、ゴルフクラブのドライバーを九龍彰宏の頬に叩き付けた。
ゴンッ!!
「ガハッ!!」
カランッ。 九龍彰宏の口から血と折れた歯が吐き出された。兵頭雪哉の周りには岡崎伊織、組員達が立っていた。
「お前は傘下の掟に背いた。その意味は分かるよな。」
「お、おれは二見に騙されてっ、ゴフッ!!」
兵頭雪哉は容赦なく、九龍彰宏の脇腹にゴルフクラブのドライバーを叩き付ける。
「椿とお前が繋がってる事はもう、分かってんだ。二見は元々、椿会の人間で九龍会の殆どが椿会の組員だった。どんな理由で、お前と椿が手を組んだのかは知らないが。」
ガッ。
兵頭雪哉は乱暴に九龍彰宏の髪を掴み、顔を上げさせた。 「俺を敵に回したんだ。お前がどう言う道に落ちるのか分かるよな?」
「チャンスをくれ、雪哉!!俺は、お前の…。」
「役に立つと?どう役に立つ。お前ごときがどうやって?」
「そ、それは…。」
「な?何もないだろ。大した情報もなければ、二見の居場所も分からないじゃないか。そんなお前にこれ以上、何を望む?望む事はないだろ。本家に仕掛けてあった監視カメラの映像に映っていた、二見と少女の存在が知れただけでも良いだろう。」
九龍彰宏は兵頭雪哉の足に縋り付く。
「嫌だ、嫌だ!!俺は死にたくない!!死にたくっ…。」
「テメェ、親父から離れろ!!」
組員に引き剥がされた九龍彰宏は、組員達に動きを封じられた。
「頭、九龍彰宏をどうしますか。」
「九龍会は潰す。そして、傘下の破門にしたと他の組に連絡を入れろ。」
「分かりました。それと、二郎から電話が…。」
岡崎伊織はそう言って、スマホを渡した。
「分かった。」
スマホを受け取った兵頭雪哉は、地下を後にした。
「どうした。」
「すいません、ボス。今、お時間よろしいですか?」
「あぁ、構わない。」
「実は、四郎が拓也さんの存在を知りました。椿が拓也さんを殺した事も…。」
「そうか。」
兵頭雪哉は煙草を咥え、火を付けた。
「それで、お前は四郎に話したのか。」
「いえ、話てはいません。ボスの指示がない限りは、メンバーには言いませんよ。別件なのですが、椿会の組員の中に裏切り者がいます。」
「椿会の組員の中にか。」
「はい、四郎に連絡をし一郎と六郎を保護していると。」
口から煙を吐いた兵頭雪哉は、言葉を続ける。
「調べろ。その男をこちらに引き入る。」
「分かりました。三郎の事はどうしますか?探しますか。」
「いや、三郎は俺に会いに来る筈だ。俺に直接、聞きたい事があるだろうからな。」
「四郎も独断で調べ出す筈です。四郎の行動も探った方が宜しいでしょうか。」
「いや、四郎の事は好きにさせろ。アイツの行動は、俺の為ではないからな。」
「分かりました。」
「何かあったら連絡しろ。」
「分かりました。」
ピッ。
通話を終わらせた兵頭雪哉は壁に背中を付けた。
「拓坊…。お前が大事にして来た物は必ず守る。それが俺が出来るお前への償いだ。早く、お前の嫁の居場所を突き止めねぇとな…。」
兵頭雪哉は再び、地下室に向かった。
AM3:00
カツカツカツ。
三郎はとある雑貨屋の前で足を止めた。
ノックを3回。
コンコンコンッ。
ガチャッ。
雑貨屋の扉が開き、高級なアクセサリーを身に纏った50代ぐらいの女性が現れた。
「おや、アンタは雪哉の所の坊主じゃないか。何の用だい。」
「久しぶり、姐さん。情報を買いに来たよ。」
「…。入りな。」
雑貨屋の中に入った三郎は、手に持っていたバックを女性に渡した。
「300万あるよ。」
「おやおや、何の情報が知りたい?」
「兵頭拓也、それから7年前の事件について。」
「その情報は、雪哉から口止めされてるんだよ。」
「姐さんは情報屋でしょ?金を貰ったら取り引きは成立する筈だ。」
三郎の言葉を聞いた女性は、溜め息を吐いた。
「ビジネスの話をしようよ、姉さん。」
カチャッ。
三郎はそう言って、Cz75の銃口を女に向けた。
「三郎、アンタ本気なのかい。」
「本気だよ。」
「アンタをそこまで動かす理由は?四郎か。」
「四郎は俺の救世主だよ。俺を助けてくれたのは、ボスでも誰でもない四郎だ。四郎に害を出す人間がいたら、先に殺す。」
三郎の言葉を聞いた女性は、渋々口を開いた。
「分かった。話すよ、お金は貰ったからね。」
「あはは、分かってくれたら良いよ。」
「とりあえず、銃はしまえ。」
「んー、姐さん次第かな。ちゃんと話してくれるなら、銃は下ろす。」
「アンタみたいなガキは初めてだよ。」
女性は煙草を咥え火を付けた。
三郎はCz75の銃口を向けたまま、女性の行動を伺う。
「7年前の事件の発端は、椿が拓也の女を好きになったからだ。」
「それって、アルビノの女の事?」
「あぁ、そもそも拓也とその女の出会いは、オークション会場でだった。その女はアルビノでありながらJwelry Pupilを持っていた。」
女性の言葉を聞いた三郎は、Cz75を下ろした。
「拓也はオークションに出された人達の救出を、よくやっていた。その時に、白雪と出会った。」
「その女の名前が白雪?」
「そうさ、椿と拓也は同時に白雪に惚れたのさ。よくある話だ、好きな女が被る事なんざ。」
「腹いせで殺したの?」
「それもあるが、椿にはもっと別の目的が…。」
パリーンッ!!
ブシャ!!
窓ガラスが割れ、三郎の頬に血が付着した。
何が起きたか分からなかった三蔵は、頭をフル回転させ状況を把握した。
バタンッ。
目の前にいた女性の頭が撃ち抜かれていた。
割れた窓ガラスに視線を向け、Cz75を構え物陰に隠れた。
「スナイパーの仕業か、姐さんを殺しに来たのか。」
暫く物陰に隠れていたが、スナイパーの動きはなかった。
三郎は倒れている女性の脈拍を確認した。
「頭を撃ち抜かれてる…、即死か。」
ガタンッ。
物音がした方に視線を向けた。
女性が倒れた衝撃で、机の上に置いてあった封筒が床に落下していた。
三郎は封筒を拾い上げ、中身を開封した。
「姐さんから聞けなくなったと思ったけど、そうでもなかったな。手間が省けた。」
封筒を持った三郎は、足速に雑貨屋を後にした。
雑貨屋付近のビルの屋上ー
喜助はM16A2のライフルスコープから、雑貨屋の中を覗いていた。
雑貨屋の女性を撃ったのは喜助だった。
「任務完了。三郎に情報を話される前で良かった。」
椿が喜助に女性を射殺するように命じていた。
「三郎の姿はない…と。椿様に連絡を入れて、報告しないと。」
タタタタッ。
喜助はスマホを操作し、椿に通話を掛けた。
「椿様、任務完了しました。三郎も姿を消したようです。」
「ご苦労様、戻って良いよ。」
「分かりました。」
通話を終わらせた喜助は、M16A2を片付けビルを後にした。