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「っ、先生…っ!楪くんの容体は…っ?」
息を切らしながら走ってきた養護の先生は、二人の様子を見た途端、ぐっと口を横に引き結んだと思ったら
穏やかそうな表情で蒼司に声を掛ける。
「常盤くん、その子、預かってもいいかな?大丈夫、容体を確認したいだけなの。
常盤くんも隣にいてていいから、診させてくれない?」
(堺くんが来る前からこの状態だったとしたら、もうすでに、5分以上経ってる…。
流石に目を覚ましてもおかしくないけど、意識がないままヒートだとしたら脳にダメージが大きすぎる……
っ、!?腕、嚙んだのね、血の量が多い…)
蒼司はそっと郁己を抱き上げて、先生に引き渡す。
先生は郁己の脈を測り、蒼司の方を見遣る。
「ありがとう、常盤くんも、その腕見せてもらっていい??」
ぐてっと壁にもたれかかり、息が荒いままそっと、左腕を差し出す。
二人ともフェロモンが出続けているのに養護の先生はそれをもろともせず、対応してゆく。
「これまた、派手に噛んだわね…」
パタパタとこっちに近づいてくる気配があると思ったら、堺だった。
「先生っ、持ってきましたっ、はぁっ、2人は…っ?」
ずっと走ってきたのだろう、膝に手をついて、こめかみからは汗が滴り落ちている。
「助かった、ありがとう、堺くん」
「蒼司は、?その黒髪は、大丈夫なんですか…?」
「常盤くんは大丈夫だと思うけど、楪くんは今からかな」
そう言うと、堺から受け取った郁己の緊急抑制剤を袋からだし、郁己に声を掛ける。
「楪くん、声、聞こえる?郁己くん、郁己くん!」
大声で話しかけても反応がない。肩を叩いても動かない。これでは抑制剤は打てない。
先生が口の前に手を当てると、息はあるようだが、反応がまったくない。
そんな郁己の様子に気づいた蒼司が、郁己の近くに膝をつく。
「ごめん、常盤くん、フェロモンを少し抑えることってできる?
郁己くんに影響が出るかもしれないから…」
自発呼吸があるといえど、意識はない上、ヒートになっている。
そんなΩの子にαのフェロモンを浴びせたらどんな影響が出るかわからない。
すぅっと蒼司のフェロモンが消えていき、郁己のフェロモンだけが残る。
それもつかの間、郁己のフェロモンも少しずつ薄れてゆく。
それが、彼の容体が急激に悪化していくことを物語っているのは蒼司と先生にはすぐに分かってしまった。
人の気配が近づいてくると思ったら、さっき、堺が連れてきた先生だった。
いつの間にか職員室に戻っていたらしい。
「っいま、救急車を呼びました。あと、10分程でつくと思います。2人の容体は、…ヤバいか…」
「10分…。郁己くん、持つかな…」
反応がない彼の頬をそっと撫でる蒼司だって堺に支えてもらってないと倒れそうなぐらいだ。
「楪……」
蒼司が呟くように名前を呼ぶと、ぴくっと指先が動いた。先生はそれを見逃さず、郁己の肩を叩く。
「っ郁己くん、大丈夫?、郁己くん!」
反応はない。息はあるようだから、回復体位のまま待つしかない。
郁己のネクタイを緩め、ボタンを2つほど開ける。数分ごとに息を確認してもらっている間に、
蒼司の容体を確認する。
「ごめんね、常盤くん、腕触らして…」
血は少しずつ止まってきているようだが、完全に、とは言い切れない。
それでも深い傷にはならなかったよう。
意識はあやふやだが、声は聞こえているし呼吸も少し震えつつも規則的にしっかりしているようで
少し安心する。
「蒼司くん、この指、見ててくれる?」
先生が人差し指を立て、左右前後に動かすと、蒼司の目もともなって動く。
「左腕、痺れたりとかしてない?」
「、はぃ…っゆず、りは…は…っ?」
(自分はそんな様子なのによく他人を心配できるのね…)
「うん、大丈夫だよ。だからもう少し待っててくれる?…って、(寝)落ちちゃった…?」
大丈夫だよ、という言葉を聴いた瞬間にブツッと蒼司の意識が途切れ、
壁から崩れ落ちた彼の体を堺が受け止める。
「っっと。、んとに、おまえは…」
「堺くん、ありがとう。そのまま寝かしといてくれる?先生は楪くん診てくるから」
そう言って立ち上がると、郁己の横に座り呼吸を確認して
堺が貸してくれたブレザーを上から掛ける。
何処からか騒がしい声が聞こえ、パタパタと足音が近づいてくる。
野次馬が集まってきたのか、と覚悟した途端に見えた姿は青と水色の服。救急隊の方たちだった。
「、堺くん、状況を説明できる?」
「、はい…!俺が来たときには、こいつはもう倒れて意識がなくて、でも甘い匂いはずっとしてました。
で、この金髪は自分で腕を噛んで、その後、αの緊急抑制剤を飲んでました。
俺が言えるのはこれくらいで…」
「年齢と名前、第二次性とアレルギーなんかもお願いします」
何がどうなっているのか把握しきれていない堺に変わり、養護の先生が口を開ける。
「二人とも16歳で、黒髪の子が郁己、Ωで10分以上意識が戻ってないです。
金髪の子は蒼司、αで、2分程前に寝落ちました。二人ともアレルギーはないです。
私が来たときには、蒼司くんはRatになりかけていて、郁己くんはソレのせいか意識がないまま
発情期が強制誘発されてました」
「Ωとαですか。蒼司くんからは事情を聞きましたか?」
「いいえ、意識が朦朧としていてあまり話せないようでしたが、声は聞こえていましたし、
傷周辺に痺れはなかったと。視界も見えてはいたようです」
ハキハキと喋っている先生の様子を横目に、堺は不安と安心に苛まれつつもほっと息をつく。
「君、最初に2人を見たとき、どんな様子だった?」
「、え、と。蒼司がゆず…郁己を抱き込んで座ってて、蒼司は痛みで理性を保ってるって感じで、
あ、あとは…」
「うなじは噛まれていた?」
「、いえ!蒼司と郁己のフェロモンはどちらも感じたのでそれはないと思います」
「何がどうなって、抱き込んでいたのかは知らないんだな?」
「、はい。蒼司から着信があって、緊急抑制剤を早くここに持って来てほしい、と。
息が荒かったし、郁己の声は聞こえていなかったです。
今からだと15分以上前にかかってきたので…」
「ありがとう」
そう言うと、郁己のもとで何かしていた隊員に話しかける。
堺は隊員の邪魔にならないよう2人から少し距離を取り、地面に横たわって空を見上げる。
蒼司が目を覚まして、何か喋っているのをぼけぇっと聞きながら、郁己の方を見ると、何やら色々とされているよう。
「じゃあ、うなじは噛んでないの?腕は噛んで、薬も飲んだの?」
「、はい、気付いたら、もう、すでに意識は…なくて」
「うなじ噛まなかったのは頑張ったな…。それで腕、どんぐらい噛んでた?」
「2分以上は噛んでたとおもいます」
(随分、派手に噛んだな…。あと少しで、神経までいくとこだったぞ)
「あと、頭、打ってた…、あいつ…。地面に、打ち付けられたとき、に」
状況を聞き出し、淡々と蒼司の腕を処置していく。
「郁己くーん!声消えたら返事してねー!」
「チアノーゼ起こしてるんで酸素投与してください」
「っ!嘔吐しました。吐瀉物除きます」
「了解。気道確保して」
郁己の容体はどんどん悪化していくようで、救急隊の方々の雰囲気から蒼司も彼の現状を悟る。
「蒼司くん、大丈夫だから、体の力抜いてくれる?
処置終わったけど、出血量多いから安静にしててねー」
そう言って郁己のもとにいき、三人がかりで処置していく。
「ゆずりは…」
次投稿するの遅くなります。
最近忙しいので、月一更新だと思ってくださるとありがたいです。
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