コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ここ…だったよな。確か。」
少し古びた大きな扉の前で足を止める。
「すぅーーっ、はぁーーー。」
ゆっくりと、大きく深呼吸をする。
きっと大丈夫。 そう信じてノックをする。
__コンコン
「誰だ?」
扉の向こうから、 何度も叱られた、聞くだけで身体が震えるような、重たい声が聞こえる。
「お久しぶりです。主様。アズサです。」
できるだけ、慎重に、丁寧に挨拶をする。
すると、ガチャリと扉が開いた。
「久しぶりだなぁ、アズサ。入れ。」
僕は「ありがとうございます」と感謝を述べて部屋に入った。
「高校生活はどうだ?上手くいってるか?」
珍しい。主様がそんなお話をなさるなんて。
「え、あ、はい。多分、それなりには…。」
やべ。戸惑いが隠せてない。
「ハハハ。俺がこんな事を聞くのは珍しいもんな。なぁに。お前は俺の子供みてぇなもんだから、ちょっと気になっただけだ。
それに、次の任務はお前の高校の生徒だしな。」
その言葉に少しドキッとした。
まるで、僕の思考が読まれているように感じた。
それでも、僕は勇気を振り絞って「あの…」と本題を切り出した。
「その任務の事なんですが、却下させて頂けないでしょうか。」
言えた。しかし、 やけに心音が大きい。速い。
「………ほう?」
やめろ。その反応。殴るならさっさと殴れよ…。
「理由を聞かせてもらっても?」
息が上がる。頭がズキズキする。気持ち悪い。
「理由、は……言、え、ません……。」
怖い。苦しい。怖い。気持ち悪い。痛い。
「なるほど。つまりお前は、個人的理由で、植村圭一を殺したくない。そういう事だな?」
何か喋ろうと思っても、何も言えない。
主様の言っていることは間違ってないし、何より、口を開けばいよいよ息ができなくなる。
「黙ってるっつーこたぁ、肯定だな。」
主様が「はぁ」とため息をつかれる。
「このやり方からは、そろそろ手を引けるかと思ってたんだがな。」
”“ドゴッ””
鈍い音と同時に体に強い衝撃が走る。僕は殴られたのだ。
「お前のことは殴らなくても大丈夫なほど、しっかりと躾をしたつもりだったんだが…。 」
主様がそう告げられる。
”“ドスッ”“ ”“ボゴッ””
「かはっ…ひゅ、ゲホッゲホゴホっ」
肺が勝手に喘ぐ。主様の一撃はすごく重たい。
「昔は、俺が言ったこと全て受け入れてくれた。それなのに、なんだ?今のお前は。」
”““ドガッ!”“”
「あ゛っ…が、ゲホッゔっ、お゛ぇ゛っ…」
体が衝撃に耐えきれず、嘔吐する。
目の前がグルグル回る。また殴られる。痛い。苦しい。嫌だ。やめて。殴らないで。
主様が「なぁ、梓、」と僕に 話しかける。
「お前は、1番従順な俺の犬だったはずだろう。どうしてそうなった?誰がそうした?答えろ。 」
やめて。何も聞かないで。言ってしまうから。
「梓。say(言え)」
その言葉が脳に響く。言ってはいけないのに、口が勝手に動く。
「圭、一…。植村圭一です…。」