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目的の北の山が見えてきた。
山からは煙がのぼっている。
「ん……火山……なのか……」
私は目を細めて呟く。
「それで火竜が棲みついたわけですな」
「なるほど……ね」
私は辰夫に笑顔を向けた。
「……さてっと。
山登りは疲れるから辰夫に乗っていきますか」
「そうですな。我も徒歩で登りたくは無いです」
「ドラゴンに戻って、私を乗せても空は飛ぶなよ!」
私は辰夫を指差した。
「高いところ怖いんだから!歩けよ!
貴様!その足はなんの為に付いてんだッ!?」
「り! 理不尽!」
*
その後、口論を重ね…
「……だから!」
「……いや! そもそも!……なので!」
「……じゃあ!……そうする!!!」
……仕方なく低空飛行するところで折り合いをつけたので、山を登った。
*
辰夫は本来の姿であるドラゴンの姿に戻り、
その巨大な翼で地面すれすれを飛んでいく。
山頂付近に差し掛かった時、
突如として激しい咆哮が響き渡った。
私と辰夫の目の前に広がったのは、まさに戦場だった。
冒険者パーティーが巨大な火竜と死闘を繰り広げている。
「ん……あの3人は……?」
私の目が鋭く光る。
すぐさまアイツらはリンド村の酒場で絡んできた冒険者達だと認識した。
何故なら、私の復讐リストに載っているからだ。
私は嫌いなヤツには一生をかけて嫌がらせをするのだ。
「うーむ。敗戦色濃厚ですな」
辰夫が冷静に戦況を分析する。
「じゃあ!負けるまで待ちましょう」
私は両手をパン!
「サクラ殿……」
「だって嫌いな奴らだし?……あ!」
──その瞬間、戦況が一変した。
火竜が巨大な口を開き、灼熱のブレスを溜め始めたのだ。
冒険者パーティーの顔から血の気が引いていく。
彼らの敗北は目前に迫っていた。
「……チッ! 仕方ないな!」
──私は辰夫から飛び降り、火竜に向かった!
私の体から放たれる威圧感が、戦場全体を覆い尽くす。
「……はは! ですよね」
辰夫が呟いた。
その口元に、微かな笑みが浮かぶ。
ちょっとだけ……嬉しそうだった。
*
そして──私は駆けながら呟く。
「……背徳感? うるさい!
うまいって言っちまった時点で負けなんだよおおお!!!」
【スキル:《怪力──深夜ラーメン罪悪感モード》発動】
【システムログ】
・出力倍率:推定500%
・精神状態:後悔+逆ギレ
・警告:ヒロイン判定は前回から停止中
・女子力:ゴリラ
「背脂マシマシ!濃厚こってり!
……しかもライス!さらに餃子!!一番ダメなやつ!!」
ズアアアアアアアアッ!!!
空気が爆ぜ、周囲の空間が一瞬ざわめく。
『天の声:なぁマジでお前の身体どうなってんの?』
「またお前か! うっさい!!」
*
「気を取り直して!!いっくわよおおお!!!
でも、この経験のお陰で明日からは野菜を食べようと思えたの!!
つまり、カロリーゼロ・右ストレート!!」
ズドンッ………!!!!
右拳が火竜の顎を捉えた瞬間、
四方八方に衝撃波が広がり、
火竜の巨体がボールのように弾き飛ばされる。
「火竜の顔が……爆ぜた……」
辰夫が耳を押さえ、痛そうに顔を歪めた──その時だった。
キキキキキッ!!!
空中で火竜が翼を大きく広げ、強引にブレーキを掛けた。
木々が突風でなぎ倒される。
「ちなみに翌日は焼肉に負けたけど、サンチェ巻いたからセーフ……
って、あれ?……今の耐えた!?」
私は目を見開いた。
今のパンチは「餃子」まで乗せたフルコースよ……?
「何をする人間!!……いや、鬼か!!
……ん?餃子?焼肉?」
火竜が空中で体勢を立て直し、怒りの形相でこちらを睨む。
その口元に、膨大な熱量が収束していく。
「マズい……ブレスが来る!」
冒険者たちが絶望の声を上げる。
「……消し炭になれッ!!」
ゴオオオオオオオオオッ!!!
放たれたのは、全てを灰にする灼熱の奔流。
視界が真っ赤に染まる。
「ちッ……避け……」
私が回避行動を取ろうとした、その瞬間。
──スッ。
私の前に、誰かが立った。
「……生意気だぞ、火竜よ」
パチンッ。
指を鳴らす乾いた音。
たったそれだけで、私たちの目の前に青白い光の壁が出現した。
ジュウウウウウウウッ!!
灼熱のブレスが、その薄い壁に阻まれ、霧散していく。
「な……ッ!?」
冒険者たちが唖然としている。
火竜もまた、信じられないものを見るように目を丸くした。
「その青き障壁……嘘でしょ……」
火竜が艶のある、しかし低い声で唸る。
「……竜王、リンドヴルム……生きてたの?」
辰夫は静かに片手を下ろした。
その背中から立ち昇るオーラは、
先程までの「パシ夫」のものではない。
圧倒的な、”厚み”があった。
「久しぶりだな。
少し見ない間に、随分とやんちゃな挨拶を覚えたようだが?」
辰夫が低く、重厚な声で告げる。
「へぇ……リンドヴルム様ともあろうお方が、
そこの鬼の女に飼われてるの?」
「飼われているのではない。……我はこの方の”足”だ。
あとバイトもしているッ!!洗濯も、買い物もな!!
全て完璧にこなしている!!我を舐めるなッ!!」
「うんうん。エサも自分で用意するし、エラいよ」
私は何度も頷く。
「……バ、バイト? 洗濯?
お、堕ちたものね、竜王……」
「堕ちた?ふん……若いな。
バイト先で店長から褒められた時の喜び……
洗濯物がキレイに仕上がった時の喜び……
買い物で市場を歩いている時のワクワク感……
貴様には理解出来ないだろうな!!
ちなみにバイトの時給は最低だ!!」
「えっと……理解したくないかな……」
ドォンッ!!
火竜がとりあえず突っ込んでくる。
「ふん。」
辰夫もまた、地面を蹴り、空へと舞い上がった。
(つづく)