「まず、俺はそんときに森林の中にいて、雨宿りしてた。んで、帰ろうってなったら突然鬼みてえなやつが出てきて俺を喰った。まっ正確には喰われそうになった」
「……」
「俺だって信じちゃいねえぜ?そんな事があったなんてな。まあでも誰かの記憶っぽい感じがするんだ。俺じゃあねえのかもしんない」
「…俺、その光景を見たんだ。そのことは一生涯忘れないと思う。あんな鬼は伝承でしか出てこないようなやつだ」
「まじか…俺お前と会ったことあんだな」
「ああ。忘れないよ」
「ふうん。それがどんな意味だか知らないけどまあ分かった。でもおりゃあ喰われてないぜ?覚えとけよ」
すると、廊下側から甲高い、女性の声が聞こえてきた。
「たけちゃ~ん?」
きっと剛史のことを言っているのだろうと賢太は思った。剛史は気づいていないようだったため賢太が剛史に声をかけた。
「お!やっほ〜」
女性が教室前の廊下まで来ると、剛史は嬉しそうにそう言った。その女性は生徒副会長の桜井桃春だった。その噂は本当だったのだ。
「じゃあいいよ。帰りな〜彼女さんがお待ちですよ〜」賢太は邪魔しない程度に言った。
「あ、そう?じゃあ失礼するな〜」剛史はそそくさと桜井の元へ行ってしまった。剛史の体で隠れていた夕日の日差しが賢太に当たった。その日差しはとてもまぶしかった。目が慣れてきて窓の方を向くと、辺りは橙色で染まっていた。なぜだか賢太は寂しく思えてきた。なぜだろうか。その理由は賢太自身でも分からなかった。
翌日。今日は祝日で賢太は近所に住んでいる、祖父母の家へお邪魔していた。母、父と祖父母の会話が楽しそうに続く中、一人賢太は部屋の隅にある座布団が何枚か重ねられたところに座り、スマホで最近ハマっているゲームをやっていた。その会話には一切入らなかった。楽しそうではあったが意味がわからなかったという。今日、本当は泊まりの予定だったかが賢太だけ自分の家に帰った。父と母がいないため、一人で晩御飯の準備をした。冷蔵庫にあったレトルトのカレーを取り出した。そして、準備をし皿に出しテーブルの上に置いた。そして、リモコンを手に取り、テレビをつけた。すると、やっていたのは怪談番組だった。番組表をつけ、なんの番組がやっているか見るが特に気になる番組はなかったのでこのままにすることにした。すると、とある怪談が始まった。題名は「鬼の子」。
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