テラーノベル
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夜中に目を開けると、閉め忘れた窓から冷たい風が吹いていた。
「閉めるの忘れてた…。」
今日は仕事が忙しく水が十分に飲めていない、それで喉が乾き目が覚めてしまった。
「水…飲んどけばよかった。」
こんな夜中に目が覚めたら、明日もまた寝不足になってしまう。最近の夜は曇りが続いている、湿気があり少し気持ち悪い。そんな気分を癒すように氷の入った水を口に運ぶ。そして布団に潜り眠れば…また来て欲しくもない朝が迎えに来る。
ーーーーピーッピーッ
スマホの振動を合図に体を起こすと、軽く溜息をつき仕事に行く準備をする。冷えて固くなった米をお椀に注ぎ、腹を満たすために口を動かす。結局は食べきらず、食器もそのままでスーツを着て雑に結ばれた髪になんて気にもとめず仕事に出た。
「ギリギリ出勤で申し訳ありません。」
一言謝ると、すぐに私は終わっていない資料を進めた。鳴り響くキーボードの叩く音を音楽の代わりにし資料を進めていると誰かが私の元へ駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか…目のクマ酷いですよ?」
心配そうにそう言ってくれたのは後輩の海斗君だった。
「あぁ…昨日は夜中に目が覚めてしまって、あまり心配しなくてもいいよ。」
目も合わせず淡々と返していると頬に何やら冷たいものが当たった。
「だめです、佳奈先輩は一番仕事のできる人なんですから。」
海斗君はそういうと缶コーヒーを渡してきた。
「え、わざわざこんなの悪いよ。」
私が断ろうとすると海斗君は強引にこちらの胸元に缶コーヒーを押し付けてきた。
「貰ってください、俺は飲まないんで。」
押しに弱い私は仕方なくそれを受けとりまた仕事に取り掛かった。資料を作り、計算しダブルチェックが終わったらまた違う資料に取り掛かる。その繰り返しを何度もしていると時間はすぐ経つ。
「…あれ。」
ふと周りを見るとそこには誰もいなかった。時計に視線を向け、とっくに退勤時間になってることに気づくと深く溜息をつき、帰りの支度をした。まぁ明日やらなきゃいけなくなったかもしれない資料も終わらせられたと考えれば五分五分か。足元の危うい動きで帰り道を通っていると、川の流れる音が聞こえ空を見上げた。今日は珍しく満点の星空が広がっていた。妙に空気も澄んでいて、久しぶりに大きく深呼吸し、草だらけの場に横たわった。
「綺麗…。」
「綺麗ですね。」
その時、横から誰かの声が重なり驚いて振り向くとそこには海斗君がいた。
「いやぁ…久しぶりの星空だったんで、まさか佳奈先輩がいるとは思いませんでしたが…。」
「そ、そう…だとしてもこんな所で会うなんて、奇遇ね。」
驚いた余韻が残っていて少しどもると、彼はクスッと笑った。
「疲れ、少しは癒されました?」
「まぁね…。」
その後、海斗君としばらく星空を見つめ、澄んだ空気を楽しんだ。
「そろそろ…帰らなきゃね。」
私は少し伸びをするとカバンを持ち上げた。
「そうですね〜…今日はお疲れ様です!」
明るく笑う彼に一瞬見とれ、私は家へ帰った。たまにはああいうのも悪くないかもしれない。今日はいつもより…柔らかい気持ちで寝れた気もする。
コメント
1件
今日は珍しい感じかも笑