テラーノベル
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数分前の事だ。
奈良が同僚の田中に連絡を取り、
「金沢支店営業部のグループLINEに招待してくれ」と頼んだが、それは承諾されなかった。
「なんでだよ、前は入ってただろ」
「やめといた方が良いって」
「なんで」
「おまえ、自分の胸に聞いてみろよ」
どういう事か分からないと尋ねると、それは奈良が富山支店の佐川さなと二股浮気をしていた事が原因だと言う。
「そんなん、仕事と関係ないだろ」
「おまえ、甘いな」
「甘いって」
「そんな甘っちょろい考えだから社内恋愛で二股とかしたんだろ。俺には出来ねぇわ」
ぐうの音も出なかった。
「奈良、その宅急便とは本気だったのか?」
「少しは」
「少しって、なんだよ。おまえ最低だな」
「……」
「それに、次の女に乗り換えるなら満島と別れるのが先だろ」
「そう、だけど」
「明日から出社すんだろ」
「お、おう」
「覚悟しとけよ。グループLINEどころの騒ぎじゃねぇぞ」
「え」
「あと、満島には手ぇ出すなよ。黒木係長と結婚すんだからな」
「え、結婚、て」
「分かったな」
奈良は愕然とし、次の言葉が出て来なかった。
「じゃ、また明日な」
同僚の厳しい口調のLINE通話はピロンと軽い音で途絶えた。
もしかしたら瑠璃とやり直せるかも知れない――その考えが足元からガラガラと崩れた。
(瑠璃が結婚? 黒木係長と?)
そして田中の言う「覚悟しておけよ」の意味を考えると、みぞおちがキリキリと痛みだした。
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