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「ねえ、カノン〜。これってどう思う?脈アリじゃない?」
あたしが席に着くと、前の席の女子が話しかけてきた。
そうやや興奮気味にあたしにいう彼女は、友達の沙羅だ。
沙羅はショートカットの茶髪で、髪の毛をくるくる巻いている。かわいいか綺麗かでいえば、かわいいの枠に入るだろう。
沙羅はスマホの画面をぐいっとあたしのほうに見せてきた。そこには誰かとのメッセージが書かれてあった。
「ん?なになに?海斗ってこれ…」
隣のクラスの男子だ。サッカーが得意で、みんなからはサッカー王子と呼ばれている。
あたしの学校はマンモス校だが、西尾海斗は学年の中でもとても有名で、誰もが知っている。
そして改めて文章を見た。
『今日の放課後、校舎裏に来て。高岡さんに、話したいことがあるんだ』
そうメッセージが書かれていた。
「………。沙羅って、西尾くんと仲良かったっけ」
「実は、委員会で一緒になったんだよね。ほら、前決めたやつ」
「うん。あったね。じゃあ、西尾くんもボランティア委員だったんだ」
「そそ、それでね西尾くんが委員長で、私が副委員長になったの。だから結構話す機会も増えたってゆーか…。」
ポポポと顔を赤くして話す沙羅。その顔はまるで恋する乙女だ。
「…ん?もしかして沙羅、西尾くんのこと好きなの?」
「ば、ばか!あんまり大きな声で言わないで!」
沙羅は真っ赤な顔をしながら、あたしにいった。
「へ〜え」
ニヤニヤしながら話を聞く。
「カ、カノンの方こそどうなのよ!好きな人とかいるの?」
「あたし!?」
突然話を振られ、戸惑うあたし。
チラッと視線を横に動かすと、ギザギザ歯の愛想の悪そうな男が立っていた。
あんなやつと付き合ってるだなんて、沙羅には絶対に言えない。
「お兄ちゃんかな」
「出たーー。お兄ちゃん!カノンはもうブラコンはやめなよ〜?早く彼氏見つけなっ」
「ふん!お兄ちゃんはすっごいかっこいいんだもん。馬鹿にしないでくれる!?」
むすっとするあたしにからからと笑う沙羅。
「でさ〜。カノンにお願いがあるんだけど…。」
ちょっと気まずそうにあたしを見つめる沙羅。こういう顔するときの沙羅は……。
「放課後、私の後をついてきてくれない?西尾くんになに言われるかわからないし、緊張するから」
ほらぁ〜!面倒くさいこと頼まれる。
「あたしお兄ちゃんと帰る約束してるからいけませーん」
「え〜〜。ケチ〜〜」
ぶうぶう文句を言われたが、気にしない気にしない。だってお兄ちゃんのほうが大事だもん。
「カノン……」
「ん?」
「お願い!カノンに見てて欲しいの!この通りっ」
手をパンっと合わせてお願いするポーズをとる沙羅。あたしはこういうのに弱い。沙羅はそういうのよくわかってるな。
「まあ、そこまで言うならついていってあげなくもないけど?」
そういうと沙羅は顔をパァっと明るくして、
「やったー!ありがとうカノン!」
抱きしめられた。我ながらチョロいな。