「わぁ…………すっごく……綺麗!」
「俺も、水上からの夜桜見物は初めてだけど…………美し過ぎてヤバいな……」
二〇二五年四月二日。
この日は純と恵菜の誕生日。
二人は隅田川のお花見クルーズに乗船し、朧気に浮かび上がった夜桜を、船上から楽しんでいる。
浅草から乗船し、隅田川を下り、東京湾に出て、お台場で下船するコースだ。
船は川を滑るように進み、隅田公園に咲き誇っている両岸の桜に、二人は、うっとりしながら愛でている。
四月とはいえ、外はまだ寒いが、純は恵菜の手をしっかりと繋いでいた。
二人は、誕生日当日と翌日の三日、有休を取得。
さらに純は、恵菜と立川で食事をした数日後、このクルーズコースに予約を入れていたのだ。
桜の季節の人気クルーズ。
クルーズ船のサイトを開いた時、残り枠は一枠だったが、予約が取れると、彼は思わずガッツポーズをしたほど。
この日、二人は、午前中から純の愛車でお台場に行き、宿泊するホテルに車を駐車した。
ショッピングモールや海浜公園で過ごし、昼食を摂った後、公共交通機関で浅草へ向かい、浅草寺や仲見世通りを散策。
慌ただしい日中ではあったが、純も恵菜も、恋人同士となって初めて過ごす誕生日に、気持ちが高揚していた
夜の帳が降りる頃、隅田川の乗船場へ向かい、今に至っている。
クルーズ船は順調に水上を進み、花明かりの桜から、少しずつ高層ビルの多い風景へと変わっていく。
ライトアップされた橋の下を潜り抜け、次第に視界が開けていくような景色を、純と恵菜は、船上で寄り添いながら楽しんでいた。
「景色が海に近付いてきたか?」
「お台場も近いかもしれないですね」
二人は川の上から都心の夜景を楽しんでいると、船が大きく揺れ、純は恵菜の身体を抱き留める。
「大丈夫か?」
「大丈夫で…………って…………わぁっ……!!」
異国情緒の顔立ちをした恋人が、視線を遠くに向け、破顔させている。
「恵菜? どうした?」
彼女の視線を追うように、純も同じ方向を見やると、煌びやかな東京の夜景が一面に広がっていた。
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