「海から見る夜景…………すごい……!」
「おお…………圧巻だな……」
ぐるりと囲まれているお台場の夜景に、二人は感嘆の声を漏らした。
レインボーブリッジと某テレビ局の球体を始め、午前中に行ったショッピングモールや二人が宿泊するホテルも見え、海上では別のクルーズ船や屋形船が浮かび、色彩溢れる光に包まれている。
純たちが乗船しているクルーズ船は、小波が打ち寄せてくる中、湾内へと進んでいく。
海風が冷たいせいか、船上は純と恵菜だけだ。
「純さん」
「ん? どうした?」
恵菜の呼ぶ凛とした声音に、純は肩を抱き寄せながら恋人を見下ろす。
「お誕生日、おめでとうございます」
彼女が、細長い箱が入った、手触りの良さそうなモスグリーンのショップ袋を手渡した。
「おおぉ……ありがとう!」
恵菜のプレゼントは箱の形からして、恐らくネクタイだろう。
月に一度、向陽商会本社での合同会議で、スーツを着る機会のある彼は、そろそろネクタイを新調しようと思っていた。
「開けてみてもいい?」
「どうぞ」
彼は、ラッピングペーパーを丁寧に剥がし、箱を開けると、有名なメンズブランドのシルクのネクタイが現れた。
クリームイエローの優しい色合いの生地に、グレーとネイビーの細いラインが交互に入った、控えめなストライプ柄に、純は顔を綻ばせている。
「恵菜って、センスがいいな。すげぇオシャレなネクタイ、本当にありがとう……!」
大切な人から頂いたネクタイを箱に納め、ショップ袋に入れると、船上で二人きりの状況をいい事に、恵菜の唇をそっと塞いだ。
「いえ……気に入ってくれて嬉しいです」
華美な夜景の中で唇を重ねられた恵菜は、目を細めながら純を見上げる。
クルーズ船は更に進み、目の前には、壮麗なレインボーブリッジが徐々に近付いてきた。
コメント
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お疲れ様でした。その後どうなったのか又続編でも読みたい位でした。