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宵の口、と言う理由よりも、空に覆い被さる雨雲のせいなのか、当たりは闇に包まれていた。


頼りの回廊の要所要所に灯されている松明《たいまつ》は、雨風に消され、明かり取りの役目を果たしていない。


それぞれの部屋から漏れている、明かりが、その場をほんのり照らしているだけだった。


そんな暗闇に近い状態でも、溢れた水の中を、進んで来た人物の姿は、波瑠にもハッキリわかった。


風格のある鎧に身を包む、白い見事な顎髭をたくわえた、老兵らしき男が幾人かの人影と共に水の中に立っていた。


「この様な場所から、申し訳ございません!もしやと、思い様子を伺いに参りましたら、やはり、こちらも!」


老人は、威厳のある声を発した。ザアザアと音をたてながら、降りしきる雨に、ずぶ濡れになりながらも、堂々とした態度で、接している。


ふさふさとした、白い髭は、雨を弾いていた。


この白さが、暗闇でも、波瑠の目に止まったのだ。


「ここは、王妃様の仰られる様、皆様、ご避難なされませ!」


老人は、雨風の音に負けじと、声を張り上げた。


「これは……、異なこともある。崔《さい》将軍ではないか?そなた、隠居したと聞いていたが?」


王が、どこか嫌みな口調で言った。


「はい、確かに。ですが、都の河、十余本すべて氾濫しております。人手が足りないと、私へも声がかかった次第」


老人は、王に負けじと、顔を引き締め答えた。


その会話を聞きながら、なんとなく、おかしい、二人は仲が良くないのではと、波瑠は感じとる。そして、驚いてもいた。


波瑠が知る限り、都には、三本しか河はない。ところが、話では十本以上あるという。


やっぱり、ここは、千年前の時代なんだと、波瑠は確信した。


千年の間にあったはずの河は、干上がってしまった、人工的に流れをせき止めた、などなど、様々な理由から、本数が減った、いや、千年もの時が流れていれば、地形だって変わるはず。


波瑠が、妙に納得している間も、王と現れた老人の間には、目に見えない、不穏というべきか、わだかまりというべきか、妙な雰囲気が流れていた。


「とにかく、私の所へも声がかかるほど、人手不足。都は、至るところで河が氾濫しております。ひとまず、土嚢《どのう》を積み上げ、仮堤防を作って、もたせてはおりますが……」


それも、雨が止まない限り、水かさは増す一方。すぐに、決壊し、また、一から土嚢を積み上げと、いたちごっこになるのが、目に見えている。


しかし、今取れる策は、それしかないのだ。


「そして、その様な陣頭指揮を、なぜ、隠居の身の将軍が行っている?まずは、閣議を開き審議の上で物事を進めるべきであろう?」


王は、吹きさらす暴風よりも、冷えた言葉を、現場で、起こっている事を報告している老将へ投げかけた。


「ちょっと!なにそれっ!」


波瑠は、思わず叫んでいた。


河が何本も氾濫している。それを押さえる為に、皆で必死に作業をしているだろうに……。もしかしたら、波瑠達が思っているよりも、市中は、酷い有り様なのかもしれない。だから、作業を差し置いて、宮殿の様子を伺いに、老人はやって来たのかもしれない……。


なのに、呑気に、閣議だ、審議だと。


「事は急ぐんでしょ!人の確保よ!ああ、それもだけど、食料!炊き出しはどうなってるの!お腹が減ってたら、体も動かない!そうよ!皆!炊き出しの準備をして!」


慣習に従い、王の前だと、わざわざ水に浸かりながら、平伏している女官達に、波瑠は、手伝う様声をかけた。


が、皆、びしょ濡れで、冷えからぶるぶる震えているだけだった。


「もう!なんなの!私が、行く!おじいちゃん!案内してっ!」


「お、おじいちゃん……?!」


老人は、驚き、どうしたものかと、波瑠を見た。


「え、あっ、その、そうよ!た、民が困っている時こそ、王の、いえ、王妃の出番というか……務めってことで、つまり、そのぉ、王妃命令!!今すぐ、必要なものを用意して!」


自分は、波瑠ではなく、王妃だっと、慌て、言い訳がましい言葉を発したが……。


王と女官達は、ただ、ただ、波瑠の言い分に、呆然とするだけで、一方……。


「ありがたい!!王妃様自らお出ましになられれば、現場の指揮も上がるというもの!」


老将と、引き連れきた部下達は、笑顔と共に、さっと、波瑠こと、王妃へ向かって頭を下げた。

転生王妃の逆襲は王の溺愛に阻止される

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