その衝撃で男はピストルを手放した。迷いもなくそのピストルに手を伸ばし、無防備になった男の足の甲、そしてすぐ側にいた同じ武器を持つ男の肩を撃つ。次に、ライフルを持っていた男に、ピストンを向け、左太ももを撃ち抜いた。
ダン、ダンッ、、、ダン!と酷く大きな撃つ音が響き渡った。
他の男たちは優斗に銃口を向けながら、次の行動に移ることを忘れ、茫然と硬直している。
彼らもまた、この日本で銃を手慣れている人間に会ったこと、難なく人に撃つ優斗の動きに驚いていた。
それだけではない。間近に見た優斗の全身に漲っている“凄み”に大きな衝撃を受けていたのである。
『君は一体、?!』
リボルバーを構えていた男がボソッと呟くも、優斗はそれに構う訳もなく、弾の切れたピストルを顔にぶん投げる。
動揺しきっていたのか男は、無差別に撃ち始めたのだ。すると回転弾倉に入っていた弾があっと無くなったのをしり、吹っ切れたように怒涛狂乱で優斗に向かって拳をやる。
「おらあ! 」
ダッキングでその拳を斜めに避けてはバランスを整えてバックスピンキックを男にかけた。
男のリボルバーのバレル(銃身)を握り、あまった片方の腕を振りかざして男の頭に向けてエルボーをかましたのである。
肘が目にあたったのか、呻き声をあげてリボルバーから手を離し、両手で目を覆った。
すると、正面から肩を撃たれた男が、手で肩を押さえつつピストルを片手で持ち、優斗に向けた。その垣間見えた優斗の射竦めるような眼光を、しっかりと見る。
優斗は撃たれまいと目をやられた男の背後にまわり、首に腕をかけ気管を圧迫。まさに、絶体絶命の男を盾にしていたのだ
「も、もういい!その手を離しなさい!」
なかなかの剣幕がある声が部屋に響いた瞬間、銃を地面に落下させ、如何にも戦いませんという降参ポーズを優斗は目の当たりにした
『違うんだ、我々は君を試していたんだ!』
「えこれのどこが?!俺死ぬかと思いましたけど?!てか急にヘイト向けられてはガチで発砲するし??」
眉を顰め、苦しそうな顔でその場でヨロヨロとしながらも立つ。彼は両脚を少し開いて直立不動だった姿勢を、尚のこと硬直させた。
次の瞬間、俺がぶち壊した入り口からそれなり品のある偉そうな人が顔を出し目を見開いていた。
40代半ばと思われるその男は。典型的なフランス人に見られがちな、どことなく危うい甘さの漂う端整な顔立ちをしていた。しかし、服装とガタイの良さとは、往々にして一致しないものである。
〈、、、おぉ?!面白いことになっちゃってるね。〉
「、、、???」
身長190cmもありそうな、威厳のあるその顔付きに手が震える。
〈その腕緩めたらどうだい?〉
常にあがっている口角で、その異様な男が言う
〈私はリアン・スミスだ。君はぁー、、、あもしかして、優斗くん?〉
「え、、、?」
腕の力を緩ませると、締め付けられていた男はどさっと膝をついて崩れ落ちる。
すこしばかり両脚に力をいれて銃で撃たれても回避できるように、バランスを保つ。
意志見るからに強靭にして泰然自若たる印象の人物を目の前に、流石に竦んでしまう。
〈実は、黒瀬 杏奈チャンから、もしかしたら1人の強い男の子がくるかもしれないと言われたもんでね。〉
「あ、、、!」
〈おっ覚えててもらってありがたいよ。一応試しとしてサプライズをしたかったんだが、、、こりゃ予想外だなぁ!〉
「いやいやいやいや、こっちの方が論外です」
そもそもこの国、日本では銃砲刀剣類所持取締法が訂正されているのでこう言った悲劇なサプライズはもっともほかである。
〈君を試していたことは謝るよ!でも君の動きや判断はどれも鑑賞性に優れている。〉
穏やかな顔を続けるその外国人おじさんはローテーブルに座った。
「、、、!」
俺はすぐにそのリアン・スミスの持ち物に鋭い目を向ける。海兵隊二等軍曹のようなデザインをした服の腰に、M1911をぶら下げていたのを、この目で確認したからだ。
〈さ、本題入ろっか。率直に言うと。君を勧誘するよ。年齢は気にしないからさ安心してね〉
「いや年齢もなにもなんで銃を、、、」
〈まぁ簡単に言うと!わるわる業界でいう殺し屋かな?〉
「?!えちょっっっっっとまって嘘っすよね!!まじでシャレになんない」
突然物騒なことをいう外国人おじさんに、ぞわりと背中を氷でなぞられるように悪寒がした。
、、、だからさっきのボディーガードみたいな人たちは銃を持って撃ってきたのか!
日本には存在しちゃいけない解釈が生まれてしまう。
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