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「どうして僕に内緒にしてた? もう一度父と会うために僕を利用してたのか?なんてこった、純情そうな顔をして!」
「勝手な勘違いするな!お前と会ったのは偶然だ!そして俺ともな」
「全部聞かせてもらいたいね、百合は父さんの愛人だったのかい?」
「ちがう!」
隆二が突然和樹の右頬を殴った
「首根っこをへし折られたいのか? 彼女のことをそんなふうに言うな!」
部屋じゅうが静まりかえり、二人の男の視線で火花が散った
「会った当時は百合は俺が誰なのか知らなかった、俺はそれほど詳しく自分の事を語らなかったんでね」
隆二が後ろにいる百合を見つめた、それから和樹の方に向きなおって威厳のある声で続けた
「俺は百合を愛している、今もちょうど結婚してほしいと頼んでいた所だ」
和樹はもうこれ以上立っていられなくなった、自分の手の平で顔を覆った
「どういうことなのか、わからない・・・」
「お前には関係ないことさ、何も話す必要はない」
隆二はつき放すように言った、和樹は顔を起こして、二人を見上げた
「関係ない?彼女は三カ月間僕とつき合ってたんだよ、それでも関係ないって言うのかい?父さんは僕を騙していたんだ」
「和樹・・・」
百合がベッドで硬直したまま言った
「それで? それだけじゃないんでしょう? 僕だってまぬけじゃない、今までの事をすっかり教えてもらうまでは、ここを動きませんからね」
「お願い和樹・・・」
百合が俯いていた顔を上げて、哀願するように訴える、和樹が叫んだ
「どうしてそんなことができる!君は僕とも寝て親父とも寝ていたのか!」
「やめろ!」
いきり立った隆二が涙を流している息子の首に手をかけようとするのを見て、百合はハッとした、和樹が暴言を吐くのは、苦しんでいることの裏返しだった
「彼女は俺が誰なのか知らなかったんだよ、それに、二年半も会ってなかったんだ」
「二年?」
和樹はびくっと顔を起こした
「二年前って・・・あなたが中国を飛び回って、母さんが死んだ時じゃないか、だけど、その頃百合はまだ・・・」
「そう、十八歳だった」
隆二が低い声であとを継いだ
和樹は軽べつしきったように口もとをゆがめた
「酷いことを・・・高校生の女の子に・・・きちがいだ!」
隆二はきっと歯をくいしばって言った
「まったく、 そのとおりさ、出ていけ!お前が俺に勝てるのは射精の早さぐらいだ」
和樹の顔に疲労の色が浮かび、彼はがっくりと肩を落とした、それからゆっくりした足どりで出ていき、最後にばしっとドアを閉めた