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愛と憎み.... 血縁関係があるから、余計に難しいのですよね😢 親子関係の拗れや勘当、そしてあの事件.... 両家の祖父母がご健在のうちに いろんな憎み、蟠りが少しずつ解消していくことを願っています🍀 いつか尊さん&朱里ちゃんと 将来生まれてくる子供達が、篠宮家と速水家を結ぶ 鎹 となりますように👨👩👶💖✨
「あなた達ならうまくやっていけそうね」
「朱里とならうまくやれる自信があるよ。だから心配しなくていい。遠くから見守ってくれるだけでいいから、宜しく」
「ええ」
肝心な話は終わり、そのあとは美味しいケーキをいただきながらの楽しい話となった。
話題はお土産の雲ケーキから始まり、私の好きな食べ物から、私が食いしん坊という話に発展してしまう。
「あら、じゃあ私が贔屓にしているお店に連れていきたいわ」
「私も顔が利く店がそこそこあるから、朱里さんに味わってもらおう」
「こ、こここ光栄です」
「いやだわ、朱里さん。ニワトリになってる」
「朱里は猫だよ」
そこで尊さんが口を挟み、「あら、どういう事?」と琴絵さんから興味を持たれてしまう。
そんな感じでお二人とはいい感じにご挨拶ができ、あまり長居しても申し訳ないので、二時間ぐらい経った頃に篠宮邸をあとにした。
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私たちは三田のマンションに戻ったあと、着替えてからコーヒーを淹れて一休みする。
土日祝日は町田さんは休みなので、私は夕ご飯をどうしようか考えていた。
でも篠宮家を訪れていた時から気になっていた事があり、尊さんに尋ねる事にした。
「あの、ちょっとまじめな話、いいですか?」
「ん? いいよ」
ソファの上に膝を抱えて座っていた私は、両手で持ったカフェオレをフウフウと冷まし、一口飲んでから尋ねる。
「篠宮家はお母さんの死の事で、速水家に何かお詫びをしましたか? 双方とも大きな会社ですし、こじれたら企業的に厄介かな……と。食品と音響となら、あまり結びつきはないかもですが」
「ああ……」
尊さんは頷き、ソファの上で胡座をかく。
「一応、ちゃんと侘びは入れたらしいんだが、正式には受け入れてもらえなかったそうだ。母は速水家の者ではない事にされているから、詫びても『うちにはそんな名前の娘はおりません』という反応だったそうだ」
「……そっか……」
問題は篠宮家という〝外〟だけでなく、速水家の〝内〟にもあった。
「その扱いを覆す事はできないんですか? 故人に対してあまりに……」
「俺もそう思うけど、決定したのは祖母だ。……母はピアノの才能があった。祖母は娘として大切にしていたのと同時に、ピアニストとしての夢も託していた。……それを裏切られて、どうしても許せないんだろう。母と妹が亡くなってから二十二年経ったが、ずっと意地を張り続けて引っ込みがつかなくなったんだろう」
カフェオレボウルを置いた私は、そっと尊さんの手を握る。
「……尊さんは本家に顔を出すつもりはないんですか?」
ずっと気になっていた事を尋ねると、彼は苦笑いする。
「俺もタイミングを見失ったな。母を亡くしてすぐなら、身寄りがないという事で速水家の門を叩けたかもしれない。でも親父が俺を引き取って、速水家は俺にノータッチを貫いたし、陰でちえり叔母さんとやり取りしていても、本家は何も言わなかった。……祖母が母にこじれた感情を抱いているのは知ってるが、二十二年経った今、向こうが俺をどう思っているか、まったく分からない」
「……難しいですね……」
小さく溜め息をつくと、尊さんは微笑んだ。
「人間同士、それも家族や親戚のこじれって、解決するのは難しい。血縁であっても、顔を合わせず一緒に暮らしていないなら他人も同然だ。……子供ならまだ柔軟に〝仲直り〟ができるかもしれないけど、歳を取るほど頑固になり、下手なプライドで身動きがとれなくなっていく」
「確かに、その通りです」
神妙な面持ちで頷くと、尊さんは微笑んでトントンと私の背中を叩いてきた。
「ま、あんまり気にしなくていいよ」
「……ん、はい」
その週末は金、土、日の三連休で、ミッションを終えた私たちは、残る休日をゆっくり過ごしたのだった。
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あっという間に三月になり、このところ週末といえばイベントばかりだったので、三月頭の週末はゆっくり過ごした。
新商品も売り出しまで大詰めになっていて、今はテストマーケティングの段階に移行している。