テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#不倫
#離婚
#ヒトコワ
世界経済フォーラムでの成功により、ルーツ・ガーデンは一躍
新時代のプラットフォームとして世界標準となった。
しかし、その喧騒の渦中で、私は一通の「資産譲渡契約書」を作成した。
「海君、そして陽太。今日から、ルーツ・ガーデンの全運営権をあなたたち二人に譲渡するわ」
驚く二人を前に、私は父の万年筆を静かに置いた。
数字を追い、敵を駆逐し、世界を再定義する。
その戦いの中で、私は十分すぎるほどの「復讐の利息」を受け取った。
これ以上、私がこの巨大な数字の操舵席に座り続けることは
かつての直樹と同じ、数字への執着に繋がってしまう。
「私は、父がやっていたような、目の前の一人と向き合う『一円の相談所』に戻るわ。……数字の海を泳ぐのは、若いあなたたちの仕事よ」
経営の第一線を退くという私の宣言は、世界に衝撃を与えた。
しかし、私にとっては、ようやく「自分の人生」を黒字で確定させるための、必然のステップだった。
◆◇◆◇
その日の午後、庭掃除を終えた莉奈が私の元へやってきた。
「詩織さん…私があなたから受け取った『一円の慈悲』。その本当の対価を、今お支払いしたいの」
莉奈が差し出したのは、彼女が長年隠し持っていた、小さなボイスレコーダーだった。
「直樹は……本当は死ぬ数日前、私に電話をかけてきたわ。…彼は、自分が死んだら、すべての罪を私に着せて、あなたを『完全な被害者』として守るようにと」
莉奈の告白。
直樹は死の間際まで、「愛」という弱みを他人に見せることを拒み
偽善者を演じきることで私を守ろうとした。
それはあまりに歪で、自己満足に満ちた汚い愛だった。
「彼は最期まで、素直になれなかったのね……」
私は莉奈の目を見た。
そこには、かつての愛人としての執着はなく、罪を共有した戦友のような、静かな諦観があった。
「教えてくれてありがとう、莉奈さん」
直樹が仕組んだ「悲劇のヒーロー」としての幕引き、私が今、この手で完全に却下してあげた。
あいつはただの、最低最悪であり身勝手な私の元夫。
それ以上でも以下でもない。
【残り3日】