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#ハッピーエンド
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年長の弟子、ジョディは涙目を隠そうともせず、一歩前に進み出て一人と一匹、一頭、オマケの二柱に向けて大声で告げる。
「師匠っ! いってらっしゃませっ! 後のことは我等にお任せをっ! 我々の命に代えてもラマスさんはお守りします! ですから…… た、沢山稼いで帰って来てくださいねっ!」
「「「「稼いで帰って来てくださいっ! ううっ」ワッ」オオォ」ウッ」
他の弟子たちも学院の古株魔術師か誰かに聞いたのか、一昔前に良く聞いた魔術師をマツリに送り出す時の様な声を合わせて頭を下げている。
所々漏れ聞こえる嗚咽は互いの信頼感や親愛の証拠だろう…… 美しい……
レイブは弟子たちに向けて殊更明るい声音で告げる。
「はははっ! じゃあ皆行ってくるよっ! さあさあっ! 稼げるかどうかは判らないけどぉ…… 行こうっ! ズンドコドンッ!」
『くははっ! 良いじゃないか、行こう行こうっ! クハハハァッ!』
アスタロトの高笑いを切欠にして、レイブたちスリーマンセルは歌いながら振り返る事無く南に見える山脈を目指して歩き始め、その姿が見えなくなるまで振り返ることは無かった。
遠ざかり視界から消えたその背に向けて、ラマスがいつに無く掠れた声で小さく語り掛けるのである。
「ダーリン…… アタシいつまでも待ってるよ…… ずっと、待ってる…… グスゥッ!」
涙を堪えて一心に歩き続けて来たからか、歌っている内に何と無く楽しくなってしまったかは定かでは無いが、夕暮れが訪れた時にはレイブ達一行は遥か南で東西を横切る山脈の山裾へと辿り着いていた。
この辺りを東進すれば、昔彼らがバストロやジグエラ、ヴノと過ごした岩山や渓谷を横切り、計画通りに行けばハタンガの荒野を東に抜ける事が出来る筈、詰まる所、この旅路のスタート地点へと早くも到着した事になる。
『今日は殊の他順調に進んだじゃないか♪ なあ皆、この辺りで野営とかキャンプファイヤ的なヤツとかをしたら良いんじゃないかな? どうだ? 楽しそうじゃないか!』
言い方は馬鹿っぽかったが、レイブ達もテューポーンもこの言葉に否は無く、魔神様の言う通り、今夜はここで野営をする事となったようである。
レイブは背負った背嚢の荷物から、渇いた樹皮を解した焚き付けを取り出して、そこらで拾って来た朽木の破片に同じく拾って来た枯れ枝を擦り付け火を熾そうとしている。
思えばこの場にいるのは化け物染みた魔神と大魔王、それ以外も生きたモンスターをそのまま搾って踊り食い出来るスリーマンセルだけである。
当然夜目もばっちりクリアー、煮炊きの必要も無いとくれば、火を熾す理由は一つ、魔神様のリクエスト、キャンプファイヤー的な感じにしてあげようとした…… そんな優しさしかない訳だが……
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