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「…………もしもし」
『純、お疲れ。ってか何があった?』
「いや…………久々にお前と飲みながら話したくなってさ……」
『女の事か?』
「…………」
豪に言われ、心臓が口から飛び出そうなほど、ドクリと打たれた。
『ありゃ。純クン黙りこくってるって事は……図星だな?』
画面の向こう側で、豪がニヤけたように感じるのは、気のせいだろうか。
「うっ……うるせぇな」
『ってかさ、次の日の土曜は? せっかくだし、うちに来いよ。お前、まだ俺ん家に来た事ねぇだろ?』
「ああ、でも高村さんもいんだろ?」
『そりゃ奈美もいるけどよ。まさかお前…………俺の妻を除け者にする気か?』
豪の声音が、急にトーンダウンして不機嫌を滲ませた。
「いっ……いや、そんなつもりで言ったワケじゃねぇよ? でもよぉ、やっぱ男同士で話したい事だって、あるじゃん?」
『お前が奈美抜きで話したいって言うなら、この話はナシだな』
「はぁっ!?」
豪の奈美に対する溺愛っぷりに、純は思わずドン引きしてしまう。
落ち着いた雰囲気を纏う俳優バリのイケメンが、結婚してから、こんなに妻を愛しまくるなんて、純の想像を遥かに突き抜けていた。
『ウソウソ。けどよ、今回は奈美も一緒にいた方が…………俺はいいと思うけどな? 女の気持ちは、同性でもある奈美が、よく分かるだろ?』
親友の言い草のニュアンスに、電話口の向こうで、含み笑いをしているように感じた純。
彼は観念して、フウゥッと大きくため息をついた。
「分かった分かった! お前の高村さんに対する溺愛ぶりは、よぉぉ〜〜く分かった。なら、土曜日に、豪の家にお邪魔させてもらうよ」
『あ、お前、車で来るんだよな?』
「ああ。そのつもりだけど」
『なら住所教えておくわ。国分寺市…………』
純は録音ボタンを押し、豪の音声を収録しておく。
「じゃあ、今度の土曜日な」
すっかり長くなってしまった電話を切ると、彼は慌てて職場へ戻った。