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土曜日の正午前。
純は、ロイヤルブルーのSUV車で、豪の自宅に到着した。
初めて招かれた親友の自宅は、モダンな雰囲気の二階建ての一軒家。
ガレージは車二台分の広さ、白のSUV車が駐車されていて、表札は『Motohashi』とローマ字表記されている。
純は、隣の空きスペースに愛車を止める。
(すげぇ広い家じゃん……。さすが本社勤務……)
彼は、気後れしながらも、あらかじめ購入しておいた老舗和菓子店の菓子折りを持ち、玄関前に立った。
インターフォンを鳴らすと、部下の奈美が『少々お待ちください』と応対する。
ドアが開かれ、豪と奈美が笑顔で迎えてくれた。
「純、いらっしゃい」
「所長、ようこそ。どうぞ中へお入り下さい」
「二人とも、今日はお招きありがとうございます。お邪魔します」
夫婦に案内され、リビングへ通じるドアを開けてくれた。
二十畳くらいの広さに、大きなテレビとソファーセット、アップライトピアノ、横には楽譜が収納されている本棚がある。
夫婦の恋人時代からのツーショット写真や、結婚式の時の写真が、壁やサイドボードの上に所狭しと飾られ、純は『うわぁ……すげぇ……』と言葉を零した。
ダイニングテーブルには、奈美の手料理が並び、純のお腹がキュルキュルと地味に鳴っている。
「所長、昼食を用意したので、ぜひ召し上がって下さい」
「ありがとう。ってか、今はプライベートだから、普通に谷岡さんって呼んでくれるとありがたいなぁ」
エプロン姿の奈美を見て、改めて豪の妻なんだ、と思った純。
奈美の姿に恵菜を重ねてしまい、思わず頬を緩めてしまった。
「おい純。お前、何さっきから気持ちわりぃ笑い顔をしてんだよ。奈美に惚れたか? だが奈美は俺の妻であり、女だからな?」
締まりのない顔つきの純を見た豪が、すかさず突っ込んでくる。
「ハイハイ。豪は結婚前から高村さんに溺愛モードだもんな。ってか、これ。お土産な」
菓子折りの存在を今になって思い出した純は、バツの悪そうな面差しで、豪に手渡した。