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第2話:侵食するトロイア
夜の高層ビル街。
ホロ・ガーディアンズの5人はリモートで繋がり、ピコの緊急アラートに呼び出されていた。
街の大画面に走るノイズ。そこから滲み出すように現れたのは――トロイア型ウイルス怪物。
外見は人間に近いが、身体は幾何学のコード片と灰色の膜で構成され、目は虚ろに発光していた。
「内部潜入型か……最悪だな」
灰と赤のアーマースーツを纏う鳴海隼人が、短髪の額に汗を浮かべて低く唸る。
その隣で、小さなポメ型ホログラムAI「マル」が冷静に分析する。
侵食ルート検出。対象、人間の精神。
怪物の視線が閃き、紫色のコードが飛び散る。
次の瞬間、秋月理央の瞳が虚ろに染まり、赤とグレーのワークスーツが暴走を始めた。
「やめろ、理央!」
丸眼鏡の奥の瞳が冷たく光り、リス型AI「チィ」までも強制制御される。
彼の手に浮いたスパナ状の光刃が、仲間へと振り下ろされた。
「防御っ!」
制服の上にドクターコートを纏う結城未来が前に出て、ピンクと黄緑のヒールスーツが光を放つ。
「サラ、プロンプト!《防御リンク》!」
キツネ型AI「サラ」の尾から広がる盾が、辛うじて衝撃を受け止めた。だが未来の足は後退し、地面にひざまずく。
「理央まで……!」
肩までの茶髪を揺らす天羽光が紫と墨染めのアートスーツで跳び出す。
「ルナ、プロンプト!《感情波・覚醒》!」
イルカ型AI「ルナ」の波紋が理央の心を揺さぶろうとするが、怪物の侵食コードが強すぎて届かない。
その間にも、トロイア型は笑うようにビルの壁を侵食し、広告映像が次々と狂った文字に書き換わっていく。
「命令:仲間を壊せ」
怪物の声が響き、理央の砲身が隼人に狙いを定めた。
「……やらせるか!」
蓮が叫ぶ。黒髪ショートを揺らし、緑のライトスーツにホログラムの翼を展開。
「ピコ! プロンプト!《未来視・同調》!」
翼が仲間全員に光を飛ばし、AI同士が瞬間的にリンクする。
ポメ型のマルが低く鳴き、サラが尾を輝かせ、チィがスパークを走らせ、ルナが波を描く。
――五体のAIの光がネットワークで繋がり、頭上に巨大なホログラムの輪が出現した。
「これが……AIネットワーク合体……!」
隼人が目を見開く。
五人のスーツに追加装甲が重なり、理央の暴走データを押さえ込むように拘束フィールドが走る。
光と音が弾け、チィが正気を取り戻し、理央が苦しげに膝をついた。
「……ごめん、みんな……」
未来が駆け寄り、ドクターコートを翻して治療リンクを流し込む。理央の瞳が徐々に元の色に戻っていく。
残されたトロイア型が最後の抵抗を試みる。
無数のコードを撒き散らし、街全体をデータの檻で覆おうとした。
「みんな、一斉に!」
蓮が叫び、翼を広げる。隼人の戦術が重なり、未来の防御光が波となり、理央の砲撃が束ねられ、光の感情波が色彩を添える。
五つの力が一つに収束し、輪が爆ぜるように怪物を撃ち抜いた。
轟音とともに、トロイア型ウイルス怪物はノイズへと崩壊した。
街の映像が元に戻り、夜風だけが残る。
「……これが俺たちの“共鳴”だ」
蓮が翼をたたみ、仲間を見渡した。
誰も言葉を返さなかったが、全員の胸に確かな絆が刻まれていた。
ホロ・ガーディアンズの戦いは、まだ始まったばかりだった。