テラーノベル
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『……誰や、お前』
健の声は低く、獣の唸りを帯びていた。
男は口の端を歪めた。
〔人間を襲う化けオオカミを狩る者だ。それ以上でも、それ以下でもない。〕
銀色の刃が月明かりを反射する。
本能がそれを危険と告げたのか、健の肩がピクリと動く。
「やめて!」
紗羅は健の前に飛び出し、両手を広げた。
「健は人を襲ってなんか……」
〔今はそう見えても、獣の血は変わらん。いずれ牙を剥く。〕
男の視線は冷たく、まるで人間を見ていないようだった。
健が低く呟く
『下がれ……紗羅まで巻き込まれる。』
次の瞬間……
銀の短剣が閃き、健は紗羅を抱き寄せて跳び退いた。
鋭い音とともに地面の草が切り裂かれる。
『……っ』
健の腕に熱い液体が滴る。
見れば、刃がかすめたのか、血が流れていた。
『離れてろ。俺がやる。』
その声と同時に、健の瞳が金色に輝き、爪がさらに伸びていく。
獣の咆哮が月夜を裂き、銀の刃と牙が火花を散らすようにぶつかり合った……。
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