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「…時に、正義から悪に転身しなければならないこともある貴方も、私も」
「_いいえ、違うかもね」
「ここには…正義なんて甘いものは、存在していないから。」
「なに、貴方はそれを覚悟して、私の元を訪れたのでしょう?」
██接続_完了、閲██覧権限が付与█されました█████。
光無き空の下、町中をまるで叩きつけてくるような雨が降り続いた中を、傘を展開した柏 かなという少女が、孤独に歩いていた
何年ぶりだろう、地球の機械化が進む中、雨や純粋な水といった、機械技術に悪影響をもたらすものは忌み嫌われていた
夏という忌々しい季節は大きく発達した機械技術により抹消された
世界中ではこれよりも強引な機械化が進む一方、エイビオでは、機械を完全に防水にするということまでは手が回っていない。
かなの携帯に、電話がかかる
プルル、プルル
かなはすぐに電話に出る
?「かなさん!」
妹である”日傘”
まるで綿毛のようにふわりと、どこか遠くへ消えてしまいそうな、ただただ純粋無垢な少女の声だ
通話越しに聞こえた無垢な声は、嬉しそうにかなへこう言った
日傘「もう直ぐ、帰ってくる_って、ほんと、なんですか?」
かなは嬉しくも、寂しそうな声で
「もちろん、ずっと待たせちゃって_ほんとにごめんね?」
「いいんです、あたしのためだ、っていうのは、分かっていますので!」
えへへ、と電話越しの日傘から、嬉しそうな声が漏れだした
かなは安心する、いつも、いつも思うのだ
かな (_日傘ちゃん)
日傘は、かなの妹的存在になるため、AIではかなの記憶を元にプログラムされたAIだ。
かな (…日傘ちゃんはAIだから、疑問を除く否定に繋がるような感情はプログラムされていない)
AIによる反逆を危険視した人々は、AIに悲しみや怒りといった感情を植え付けなかった
かな(_でも、それでも。)
かな(日傘は…大切な妹そのものだ)
日傘によれば、今日の献立はかなの大好きなオムライスだと言う。
それを聞いたかなも思わず嬉しくなって、ありがとうと言い、日傘の気をつけて、という電話をしっかりと耳に焼き付けて、日傘からの電話は終わる
かなは、大雨にかき消されそうな声でボソリと呟いた
かな「今日は、絶対早く帰らないとね。」
少女は雨夜の中、自宅へと歩く
少女は心做しか楽しそうに歩くと、いつの間にか自宅の前に居た。
玄関に広がる橙の光が目に入った、まるで夢の中のようで、かなに襲う現実を全て忘れさせる
かな「ただいま、日傘ちゃん」
外にいる限り感じていた緊迫感が抜けて、胸を撫で下ろす
玄関から廊下に続き、一番奥の部屋から幼い人影がチラリと見える
かなと同じ金髪の、肩には届かない髪がふわりと揺れた
そして、かなにとって一番聞き慣れた声が聞こえた
日傘「おかえりなさい!」
そういって天使のような笑顔を見せた
かなはリビングルームにある机と4つの椅子のうち1つに座る
しばらくすれば、オムライスが出される
日傘は食事を必要としないため、1人分だけ用意されている
日傘「えへへ…どうぞ!」
目を輝かせるかなを見て、少し照れくさそうに笑った
1ヶ月ぶりの、あたたかなご飯だ
柔らかな卵と強めのケチャップライスが舌の上で混ざり合い、喉を通る
かな「おいひぃ!!」
かなはそう言って1粒涙を流した
なんだか安心だけに包まれて、涙が出てしまうのだ
かなは、今まで多くの物を失って、未だ苦しい場所にいる
だが、今この瞬間だけが、そんなかなを引っ張ってくれるのだ
1人の少女が背負うには重すぎる全てが__この瞬間のための布石に過ぎないのだ
かなの携帯に、1つの電話がかかってくる
かな (…これは…)
通話相手は”百井りさ”
淡い水色の髪に、黒と水色のオッドアイ
水色となっている左目は視力が異様に悪く、基本的に黒となっている右目で物を見ている
かな「もしもし?どうしたの、りさ」
「かな、早速でごめんだけど…2週間後から長旅をしない?」
かなはりさの提案にまた、ため息をついた
りさはいつも唐突なのだ。
かな「いいけど…なんで長旅?いつも1ヶ月とかりさと一緒に色んなとこ行ってるけど…長旅なんて1回も言ってないじゃん…」
かなは困惑しながら聞く
りさは一息置いて
りさ「まぁ…今までとは桁違いになっちゃうから、かな?」
と言った。
かなは唖然とした、今までとは桁違い…つまり、下手したら年単位になってしまう。
かなは焦りながらりさに聞く
かな「……な、なんで!?」
「かなは、”突発性ショック”のニュースを覚えてる?」
3170年 7月
かなの住む地区から南東に位置する、ダウンカット区
そこで1人の”暗殺者”を追放しろ
という任務を遂行している、その途中
ビルに大きく表示されるニュースで、こんなものがあった
「近頃、機械が前触れもなく破壊される、という事故が多発しています。」
かな (…なるほど、そこに関係が…)
りさ「これを解決すれば、大きな手がかりが得られる可能性が高い、と私は見てる。」
かなは聞く
かな「…根拠は?」
りさは突発的に行動しようとするが、決まってそこには、かなに伝えていない理由がある
りさ「…正直、傍から考えるならないに等しい」
常に冷静に行動する、そんなりさにしては意外な答えだ。
りさは、言葉を続ける
「でも_私の親友が、言ってたの。」
??「…きっと、りさの前に、敵として立ちはだかることになる。」
??「りさ、私は…」
??「………”前の世界“を、強く望んでいる。」
??「__だから」
「またいつか、逢えたら。」