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6 - 世界に嫌われたから

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2024年02月29日

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『それは、少女に嫌われた故の力だ』


あの日以降、よく寝れない。姫様が生きていたことがとにかく信じられなくて。そんなに抱えることなの?と聞かれるかもしれないけどそれほどの事だ。だって、もう生き残りなんていないと思ってた。皆、死んだのかと思ってた。姫様も、騎士様も、死んだのかと思ってた。誰よりも、私達を信じて愛してくれた。私達も、姫様が大好きだった。その人が、生きていた。どれほどの、救いだと思ってる。……でも、気になることはまだある。姫様と騎士様は「人間の国」の人だ。目の色が世界に選ばれた人間の色に変わっていた。しかも雇われた傭兵だと聞いていた。しかも、いつもなら「調停者」の護衛をしていると言っていた。…考えても無駄だと分かっている。それでも、考えてしまう。無駄な、時間を過ごしていた。もう、このまま消えてしまいたい。そしたら、きっと楽だ。

それでも、世界は待ってくれない。また貴族様がパーティーを開くらしい。そういう噂を聞きつけようやくカレンダーを確認してめちゃめちゃ驚いた。もう1週間くらい外に出ていなかった。…人間って、堕落しきった生活してても生きていけるんだな……。

1週間の間に色々あったらしい。主に、「調停者」が貴族様に護衛を渡したらしい。そして、私の首にかけられた金額が大幅に上がったらしい。怖いねぇ……。

護衛…か。姫様レベルの化け物を渡したのかな。それだとしたら憂鬱なんてレベルじゃない。敵対なんてしたくない。死ぬのはいいけどそれまでが面倒なのは嫌だ。……我儘?今更何を言っているの?



夜になると、嫌でも人を殺さなくてはと思ってしまう。もはや人殺しが生活習慣となっている。……別に困らないな。うん。だって私の全てがそこにあるんだし。

パーティー会場に行くと、びっくりするくらい静かだった。またしても、人間じゃない音が2つ、響いていた。……でも、またしても不思議な音だ。弱い。心臓の音が、よく耳を澄ませないと聞こえないレベルだ。しかも2つの内1人はもっと聞こえない。……生きてる?ってレベルだ。聞いたことがない。こんな音。…いや、もはや音じゃない。響いてない。なんだ……?これ……。


「あ、お客さんだよ」

「別に言われなくても分かってるって…」


目の前に立ちはだかる、人だと思えない者。

シルバーと青を足した様な色の髪に、シルバーと水色を足した様な色の目を持つ人…だと思わしき者。青と水色、藍色と沢山の青とシルバーを使った和服のようなものを着ている。手には愛刀と思わしき刀。綺麗な青色で恐らく普通の刀よりも細い。なのに、剣では無く刀だと思ってしまうのは使用者の風格なのか、それは分からない。


「ようこそ、指名手配犯の殺人鬼さん」


そう言ってこちらに刀を向けてくる。血も滴るいい男だな。返り血がよく似合ってる。多分本当に言ったら褒め言葉じゃない。……私の中では、褒め言葉なんだけど。


「ちょっと、早くしたら?」

「はいはい、分かってますよ」


白いワンピースを着た黒髪に背の高い女の人が後ろでふよふよ浮いている。どことなく透けているような……。それに心音も無いに等しい。生身の人間では無いことだけが確かだ。もしかして、幽霊?


「それにしても、こんな娘が殺人鬼なのかよ。この世界は、本当に愛が無いと救いようがねぇなぁ……」

「ふふ、何言ってるの?今更そんな話しないでよ。私達には関係ない、でしょ?」

「……ま、そうだな。さっさと帰るか」


刀を鞘に収めて帰っていく。

簡単に返すと思わないで。私だってやる時はやるタイプだよ?糸を使って、攻撃した。…はず、なんだけど。


「ふふ、この人に攻撃できると思わないで」


そう、浮いている方の人に言われてしまった。なにか、術の類で防がれた。


「ん?なに、やる感じ?」

「別にやってもいいけど、予定に無いよ?」

「今更、何言ってんだ。予定に無くてもやるんだよ」

「…はぁ、めんどくさい人」

「お前ならそういう所も好いてくれるだろ?」

「……さっさとやりなよ」


なんだ?この2人。私の攻撃が効かない?…いや、効く以前の問題だ。当たってない。確実に命中しているはずの位置なのに、当たらない。……なんで?実体の無い存在?だとしたらなぜ今ここに存在出来る?幽霊なんて、本当に存在したの?え、嘘…。

攻撃が当たらない以上、私に勝ち目は無い。…しかも、こいつ世界から愛された目をしている。「調停者」が渡した護衛、異常な奴らしかいないのかよ。ほんと、嫌になる。さっさと逃げよう。多分、逃がしてくれる。直感が、そう言っている。

颯爽と走り出す。こういう時に自分の体が丈夫で良かったと思う。それ以外の時は憎らしくてしょうがないけど。



「…逃げられたけど、いいの?」

「別に、殺してこいなんて言われてねぇからな」


殺す意思は本当に無かった。ただ、抵抗するようなら少しばかり戦わないといけなかった。それだけの話だ。


「手を抜いた、なんて言われても僕は知りませんよ?」


後ろから声をかけられる。よく、聞いた声だった。

振り返ると、予想通りの人がいた。

黒に少し紫を混ぜた様な色の髪に、左目が緑、右目がオレンジのオッドアイ、そして右目に十字が刻まれているスーツを着こなした少年がいた。


「全く、行くの早くないっすか?」


その少年の後を追うようにこれまた予想通りの人が来た。

毛先の方だけ薄い紫が入った栗色の長い髪に左目が緑、右目がオレンジのオッドアイ、そして左目に十字が刻まれいる赤と紫、オレンジの和服を着こなした青年がいた。


「ちょ、主様…早すぎません?」


そう言って後ろからひょこっと顔を出した青年とも少年とも言い難い人物。予想通りすぎてむしろ少し怖い。

紫髪に少し深い赤色のインナーカラー、目は外側が紫で、中心に近づくと赤色の混ざる綺麗な色、初めの少年と似たようなスーツを着こなしている人物がいた。


「全員揃うとか、何事ですか?」

「…大体、予想出来るでしょ?」


どうやら、教えてくれないらしい。信頼がない訳では無い。恐らく、俺なら考えれば分かる事だと思っている。まぁ、予想つくのも嘘では無い。この3人がいること自体、珍しいなんてレベルでは無い。…いや、正確に言うとするならこの3人で外にいる事が珍しいのだ。そんな用事、片手で数えられる。


「んじゃ、帰るよ。要件は終わった。お疲れ様」

「…はい、了解です」


本当に、この3人がいるなら余計なことをしなくて良かったと思った。この3人は、俺達と同じだけど、桁が違う。



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コメント

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死 ん だと思っていた大好きなお嬢…姫様と騎士様が生きてたって嬉しすぎると思う、けど雇われた傭兵として自分を狙ってきたなんてやっぱり辛いよね……💦 なんて考えてるうちにまた貴族様がパーティーを開くし、蒼音さんの首の金額が大きくなるし……大変だ…… 蒼音さんが苦戦してるってことはやっぱり皆強いんだな……😵‍💫😵‍💫 おお!?最後リンカさん達も登場してる!!

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