テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
彼の言葉に、思わず足が少しだけゆっくりになる。
夜の住宅街。
街灯の光が二人の影を長く伸ばしていた。
ak「気が早くない?」
そう言うと、彼は笑う。
pr「せやけど考えてまうやん」
照れたように鼻の頭をかく。
pr「来年も一緒に帰っとって」
pr「文化祭とか体育祭とかも一緒に騒いで」
少しだけ空を見上げる。
pr「卒業しても、たまに会って」
その声は穏やかだった。
pr「そういうん想像したら、なんか嬉しくなる」
胸の奥がじんわり温かくなる。
未来なんて分からない。
でも今この瞬間、 その未来を一緒に想像したいと思った。
ak「……いいね」
小さく答える。
彼は一瞬だけ目を丸くして、それから嬉しそうに笑った。
pr「ほんま?」
ak「うん」
pr「やば」
またその顔。
本当に嬉しい時だけ見せる笑顔。
それを見ていると、自分まで嬉しくなる。
気づけば家の近くまで来ていた。
pr「着いたな」
彼が少し寂しそうに言う。
昨日も同じことを思った。
きっと明日も思う。
でも昨日と違うのは――
ak「また明日」
って言えることだった。
pr「……また明日」
彼も笑う。
少し沈黙が落ちる。
帰る時間なのに、どちらもすぐには動かない。
彼は繋いだ手を見下ろしてから、小さく息を吐いた。
pr「ほんま、帰りたない」
ak「知ってる」
pr「なんで分かるん」
ak「毎日言うから」
彼は吹き出した。
pr「確かに」
笑い声が夜の空気に溶けていく。
それから彼は少しだけ真面目な顔になった。
pr「……今日も楽しかった」
ak「俺も」
pr「明日も楽しいとええな」
ak「多分楽しいよ」
そう言うと、彼は目を細めた。
pr「それ、お前が言うと安心する」
胸が少しくすぐったくなる。
そして彼は、昨日みたいに数歩下がった。
pr「ほな」
ak「うん」
pr「おやすみ」
ak「おやすみ」
そう言って背を向ける。
でも数メートル歩いたところで、また振り返った。
pr「……あ」
20
ak「なに?」
彼は少し迷ったあと、照れくさそうに笑う。
pr「明日も好きやで」
言うだけ言って、今度は本当に走っていった。
その背中を見送りながら、 思わず笑ってしまう。
そして小さく呟いた。
ak「……俺も」
夜風が優しく吹いて、 新しい一日の終わりを運んでいった。
コメント
1件
うわあ、もうこの距離感がたまらないですね……。「帰りたない」「知ってる」って、全部わかってる感じがすごくいい。“もう会えない”じゃなくて“また明日”を言えるようになったことの重みが、さりげなく効いてます。最後の「明日も好きやで」→「俺も」の往復、心臓にきます。二人の未来がどう続くのか、じっくり見守りたくなりました。