~血ハロ1週間前~
:まふゆ視点:
…最近マイキーの様子がおかしい。
エマちゃんは「抗争が近い」と言っていたけれど、抗争とは何だろうか。
私がそのことを考えていると、察したようにミクが言った。
「…喧嘩、だって。」
「喧嘩?」
「うん。「バチボコに殴り合ういわばヤンキー界の”祭り”」って千冬くんが言ってた。」
ミクはそれだけ言うと、蝶を見つけたのか、とててと走り出した。
…今は真夜中の25時。こうして武蔵神社に集まっている私たちは、少しづつ近づく「抗争」に少しの興味と恐怖を持っていた。
ただ、それと同時に不安もあった。
「奏がいる場地くんとこが敵側行ったらしいしね…。」
絵名はそう呟くと、大きくため息を吐いた。
瑞希は今日は体調不良で来ないらしく、ここには私とミクと絵名しかいなかった。
しばらく経ってから、帰るよという花垣さんの声と共に全員が神社を後にした。
私はふと後ろを向く。
…そこには幻覚か、現実かは知らないが、静かに鈴の音を鳴らして立っている一人の少年がいた。
~血ハロ当日~
「…やっぱ考えることは一緒なんだねぇ…。」
ニーゴメンバーとミクは、抗争を見に来ていた。
…本当に偶然で、なぜか瑞希は感慨深くなっていた。
ミクは見るのが怖いのか、手で顔を覆いながら立っていた。
時々指の間から目を覗かせては隠すしぐさをしている。
「元気だねぇ…。」
絵名はそう言ってポケットに手を突っ込んだ。
今日は少し肌寒い。
それに、今日はハロウィンだ。
なんでこんな日に抗争なんてやるんだろう。
しばらく観戦をしていると、マイキーが敵側の人に鉄パイプで殴られたのを見た。
…少し怒りが湧く。
何と言ったのかは分からなかったが、ものすごくイラッとした。
奏が隣でつぶやく。
「…あの子が…一虎くん…。」
「あ、あの子が抗争の火種!?」
瑞希が大きな声で言ったものだから、他の観衆の人たちが一斉に私たちを見た。
私は知らないふりを決め込むと、またすぐに抗争の観戦に戻っていった。
…マイキーが膝をついたとき、大将首を取られないように守った稀咲とかいう人は、善人には見えない。
「だー違うんだって任せるな!!!」
絵名は声を抑え気味にそう言う。
…やっぱりそうなんだ。
奏も不服そうだし、きっとそうなのだろう。
瑞希とミクも、二人の反応を見て善人ではないことを理解した。
その時に、後ろに現れたのが…彼だった。
「…圭介くん!」
奏は小さい声でそう呼ぶ。
稀咲は圭介さんに鉄パイプで殴られると、そのまま吹っ飛んだ。
「ナイス!」
絵名はそう言ってガッツポーズをとった。
その後、圭介さんが投げ飛ばされるまでは。
詳しくは聞こえなかったが、松野さんが圭介さんの前に立ちふさがる。
…守りたいなら逆効果だ。そのまま泳がせておけばいいのに。
その場が止まる。
その時に、現れたのが彼だった。
「…!」
絵名は絶句、瑞希は少し顔を歪ませ、私は息を呑んだ。
花垣さん…。そこで止めたら…。
どんどんと近づいてくる魔の手。
ナイフを持った一虎さんが、圭介さんの方に走っていく。
奏はそれに気づいた瞬間、青ざめていった。
そして、奏も、私たちも、周りも驚くような大声で叫んだ。
「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
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