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元貴side
涼ちゃんが「いいよ、オレやる」と言ったあと、 そのまま話は流れてしまった。
誰も強くは何も言わなかった。
元貴はギターを触りながら、ふと考えていた。
(……ああ)
心の中で、少しだけ後悔する。
(みんなで一緒にやろうって言えばよかった)
ライブ後の片付けなんて、
一人でやるものじゃない。
ましてや。
涼ちゃんは、まだ入ってそんなに経っていない。
(バンドの一員なんだし)
(涼ちゃん一人でやらせる訳にはいかないよな)
元貴はそう思って、ちらっと涼ちゃんを見る。
涼ちゃんはいつも通り、ふわっと笑っていた。
「いいよ、俺やる」
本当に、軽く言った。
でも。
その言葉を聞いたとき。
元貴は一瞬、「じゃあみんなでやろう」と言いかけた。
だけど。
その瞬間。
スタジオの空気が、少しだけ固かった。
若井は何も言わないし、
綾華も高野も少し静かだった。
その中で。
元貴だけが、空気を変える言葉を言うのが
なんとなく難しかった。
(……言えなかったな)
元貴は小さく息をつく。
別に、誰が悪いわけじゃない。
でも。
なんとなく。
このバンドの中で、
まだ涼ちゃんの立ち位置は少し曖昧だった。
(……あとで手伝うか)
元貴はそう思いながら、
軽く弦を鳴らした。
その音が、静かなスタジオに小さく響いた。
RanJam
#病み